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前回は、M-VAVE FM-1をV16へアップデートし、V15から何が変わったのかを見てきました。
その中でも大きな変更点のひとつが、FM-1が8 Voiceのマルチティンバー音源になったことです。
そこで今回は、FM-1単体のシーケンサーを使うのではなく、普段使っているDAWからFM-1をコントロールしてみます。
DAWにはAbleton Liveを使用しました。
ただし、この記事はAbleton Liveの詳しい設定方法を解説するものではありません。
DAWによって画面や設定名称は異なりますが、
DAWのMIDIトラックから異なるMIDI Channelを送り、FM-1のVoice 1〜8を鳴らす
という基本的な考え方は共通しています。
普段DAWを使っている人なら、それほど難しい設定ではありません。
FM-1を「8つの音色を持った外部音源」として使う
V16では、Voice 1〜8それぞれに異なるPresetを割り当てることができます。
例えば、
Voice 1:Bass
Voice 2:EP
Voice 3:Pad
Voice 4:Bell
Voice 5:Lead
といった具合です。
それぞれのVoiceにはMIDI Channelが割り当てられているので、DAW側から対応するChannelへMIDIデータを送れば、それぞれの音色を独立して演奏できます。
つまりFM-1を、
小型の8パート・マルチティンバーFM音源
としてDAWの中へ組み込むことができます。
最初にVoiceをONにする
ここで最初に確認しておきたいのが、VoiceのON/OFFです。
V16ではVoiceごとにON/OFFを設定できます。
使用するVoiceがOFFになっていると、DAWから対応するMIDI Channelへデータを送っても発音しません。
DAW用の音源として使う場合は、最初に使用するVoiceをONにしておくと分かりやすいでしょう。
VoiceのON/OFFには大きく2つの方法があります。
GLOBEから設定する
最初にVoice 1〜8をまとめて確認するなら、GLOBEから設定する方法が便利です。
GLOBEではVoice 1〜4、Voice 5〜8の状態を確認できるので、DAW用として最初に環境を作る場合はこちらの方が効率的です。
私はDAWから使うことを前提に、最初に必要なVoiceをONにしておくことにしました。
VoiceをONにしているだけで発音数を消費するわけではありません。
実際に複数のVoiceを同時発音したときに、FM-1全体のポリフォニーを共有することになります。
PRESETS画面から設定する
制作中にVoiceを追加したり、一部だけ停止したい場合はPRESETS画面から操作する方が便利です。
PRESETS画面を表示すると、
MIDI Ch
Level
Pan
On/Off
などをVoiceごとに設定できます。
SELECTノブでVoiceを選ぶ
ここは実際に操作していて少し見落としやすかった部分です。
PRESETSを回してPresetを変更しただけでは、Voiceそのものは切り替わりません。
PRESETS画面を表示した状態で、
SELECTノブを回してVoice 1〜8を選択
します。
そのうえで、選択したVoiceへPresetやLevel、Pan、On/Offなどを設定します。
例えば、
Voice 1を選択
→ BassのPresetを設定
SELECTでVoice 2へ移動
→ EPのPresetを設定
SELECTでVoice 3へ移動
→ PadのPresetを設定
という流れです。
【K4のところをKNOB4(ノブ4)を回してONにします】
画像で見ると非常に単純なのですが、Presetの切り替えとVoiceの切り替えは別の操作になっています。
Ableton LiveからFM-1を鳴らす
FM-1側の準備ができれば、DAW側はかなりシンプルです。
Ableton Liveの場合は、複数のMIDI Trackを作成し、それぞれの出力先をFM-1へ設定します。
例えば、
Track 1 → MIDI Ch.1 → Voice 1
Track 2 → MIDI Ch.2 → Voice 2
Track 3 → MIDI Ch.3 → Voice 3
Track 4 → MIDI Ch.4 → Voice 4
という形です。
あとはそれぞれのMIDI Trackへノートを入力すれば、FM-1の各Voiceが別々の音色で演奏されます。
【Ableton Liveの複数MIDI TrackとMIDI Channel設定】
DAWによって設定画面や名称は異なりますが、考え方はほぼ同じです。
各MIDI Trackから異なるMIDI Channelを送り、FM-1側のVoiceで受信する。
基本はこれだけです。
Piano Rollで管理できるメリットは大きい
実際に使ってみて感じたのは、8 Voiceを使えることそのもの以上に、
各パートをDAWのPiano Rollで管理できる
ことのメリットです。
FM-1本体だけで曲を組み立てる場合、小さな画面と本体のシーケンサーを使って入力していくことになります。
一方、DAWならBass、Pad、Bell、Leadなどを別々のTrackとして並べて、
ノート
音の長さ
タイミング
Velocity
などを視覚的に編集できます。
コードを差し替えたり、Bassだけ少しタイミングを変えたり、特定のノートだけVelocityを変更するといった作業も簡単です。
普段DAWで制作している人にとっては、こちらの方が圧倒的に入りやすい使い方だと思います。
実際にマルチティンバー音源として鳴らしてみた
実際にAbleton Liveから複数のMIDI Channelを送り、FM-1 V16をマルチティンバー音源として鳴らしてみました。
各パートはDAWのPiano Rollで管理し、FM-1側ではVoiceごとに異なる音色を割り当てています。
【YouTube動画埋め込み:FM-1をマルチティンバー音源としてテスト】
短いテストですが、FM-1を「単体の小型シンセ」として見る場合とはかなり印象が変わります。
DAWから見ると、FM-1は複数のFM音色を同時に扱える外部音源になります。
FM-1本体から演奏する場合との違い
FM-1本体でVoice 2を選択したからといって、本体鍵盤から自動的にVoice 2が鳴るわけではありません。
SELECTで選択しているVoiceは、あくまで「現在どのVoiceを設定しているか」を示しています。
本体からどのVoiceを演奏するかは、Note Channelとの関係で決まります。
一方DAWでは、Trackごとに送信するMIDI Channelを指定できます。
そのため、
「このTrackはVoice 1」
「こちらはVoice 2」
という形で、演奏先をより直接的に管理できます。
ここもDAWからFM-1を使う大きなメリットだと感じました。
今回はEffectを最小限に留める
今回のテストでは、FM-1内部のEffectは積極的に作り込まず、軽くReverbを加える程度に留めました。
目的はあくまで、
FM-1をDAWのマルチティンバー音源として使うこと
だからです。
まずMIDIでアレンジを作り、必要なパートが完成したら一つずつAudio化してDAWへ取り込みます。
その後、
EQ
Compression
Reverb
Delay
Pan
Automation
などはDAW側で個別に処理する。
この方が、普段の音楽制作にも自然に組み込めます。
つまり、
8パートを同時に鳴らせることと、8パートを独立してミックスすることは別の話
ということです。
FM-1ではまず複数Voiceを使って曲を組み立て、必要になった段階で各パートをAudio化してDAW側へ移していく。
今回のReverbも、あくまで演奏時の雰囲気を整えるための軽い処理に留めています。
8 Voiceすべてを使う必要はない
もちろん、8 Voiceあるからといって8パートすべてをFM-1で埋める必要もありません。
実際にVelocityやSustainなども試してみると、FM-1が得意な表現と、専用音源に任せた方がよい表現も見えてきました。
Bass、Pad、Bell、Pluck、Leadなど、FM音源らしいキャラクターが生きる場所へFM-1を配置し、ピアノなど繊細な演奏表現が必要なパートは別の音源に任せる。
重要なのは、
FM-1に何でもやらせることではなく、FM-1が得意な役割を選ぶこと
だと思います。
DAW連携はFM-1の可能性を広げる入口
今回FM-1をDAWからコントロールしてみて、V16の8 Voice化の意味がかなり具体的に見えてきました。
単体で使えば小さなFMシンセですが、DAWへ接続すると、複数の音色をPiano Rollからコントロールできる外部FM音源になります。
しかも普段使っているDAWの操作環境をそのまま利用できるので、FM-1内部のシーケンサーから始めるよりもハードルは低く感じます。
まずDAWでFM-1を使ってみる。
その後、FM-1そのものの音作りを理解し、さらに内部シーケンサーへ進む。
この順番の方が、私自身もFM-1を理解しやすいように感じました。
次回は6オペレーターFMの音作りへ
今回はPresetを使い、FM-1をマルチティンバー音源としてDAWからコントロールするところに集中しました。
しかし実際に触っていると、
Operatorとは何なのか。
Algorithmを変えると何が起きるのか。
RatioとFixedはどう違うのか。
Velocityをどこまで音色へ反映できるのか。
といった、FM音源そのものの仕組みに踏み込みたくなってきます。
そこで次回は、
「音作り編——6オペレーターFMを怖がらず触る」
として、実際に音を鳴らしながらFM-1の音作りに入っていきます。
その後は、そこで作った音色も使いながら、FM-1内部のシーケンサーだけで8パートを組み立てることにも挑戦してみたいと思います。
そして、その先へ
今回はAbleton Liveを使いましたが、FM-1を外部MIDI音源として扱う考え方はDAWだけに限りません。
シーケンサー、Groovebox、iPad、別のハードウェア、さらには歌声合成ソフトを含めた制作環境への応用を考えると、さらに可能性が広がります。
FM-1単体だけを見るのではなく、
「他の機材と組み合わせたとき、FM-1はどんな役割を担えるのか」
というところまで、今後このシリーズで試していきたいと思います。
M-VAVE FM-1 解説 【1〜13】
M-VAVE FM-1について、基本操作から音作り、カスタムファームウェアまで順番に紹介していきます。
- 第1回:FM-1とは何か
- 第2回:V15で最初の一歩——音出しからシーケンサーまで
- 第3回:V16へアップデートすると何が変わるのか
- *番外編:M-VAVE FM-2が開発中——現時点でわかっていること
- 第4回:V16をDAWから鳴らす——8パート・マルチティンバー音源として使う
- 第5回:音作り編——6オペレーターFMを怖がらず触る
- 第6回:Felucca導入——FM-1が別の楽器に変わる
- 第7回:純正FM-1とFeluccaは何が違うのか
- 第8回:Firmware Hubとは何か——100種類超のFWを見てみる
- 第9回:FM-SWITCH——iPhone・iPad・Macからファームウェアを着せ替える
- 第10回:FM-1用ファームウェアをVST3 / AU / CLAPとしてDAWで動かす
- 第11回:気になるファームウェアを実際に試してみる
- 第12回:FM-1は1台で十分? 複数台運用との違いを考える
- 第13回:FM-1はシンセなのか、プラットフォームなのか
- ※公開済みの記事から順次リンクを追加していきます。公開予定記事の内容は変更することもあります。