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注文していたM-VAVE FM-1が届きました。
最近、格安シンセとして少しずつ話題になっている中国M-VAVEの小型FMシンセサイザーです。
販売ページによっては「SK15」という型番も併記されていますが、メーカーでの製品名はFM-1。
まず目を引くのは、やはり価格でしょう。
購入先によって多少前後しますが、約1万円前後という価格帯です。
ただ、実際に仕様を確認していくと、このFM-1の面白さは単に「安い」というだけではありません。
むしろ、
この価格の中に、どこまで“楽器”としての機能を詰め込めるのか。
そしてさらに、
ハードウェアは同じまま、ソフトウェアを書き換えることでどこまで別の楽器へ変化できるのか。
そこまで含めて考えると、かなり興味深い製品なのです。
今回はまず、このFM-1というシンセサイザーの概要と、今後試してみたいことについて整理してみます。
小さいけれど、中身は本格的な6オペレーターFM音源
FM-1は、その名の通りFM音源を採用したシンセサイザーです。
メーカー公称仕様では、
- 6オペレーター
- 32アルゴリズム
- 最大12音ポリフォニック
- 128プリセット
- 6種類のエフェクト
- 7モードのアルペジエーター
- 16ステップシーケンサー
- USB MIDI
- Bluetooth MIDI
- 3.5mm MIDI IN
- 内蔵スピーカー
- 2000mAhバッテリー
などを搭載しています。
27鍵のシリコン鍵盤を備えた小型シンセなので、見た目だけなら少し玩具的にも見えます。
ところが音源部分を見ると、6オペレーター/32アルゴリズム。
FM音源としては、かなり本格的な構成です。
つまりFM-1を見るとき、
「1万円だからどの程度使えるのか」
ではなく、
「6オペレーターFMシンセを約1万円で作ると、どこにコストを掛け、どこを割り切ることになるのか」
という見方をした方が面白いように思います。
これについては、実際に音を作り、演奏し、録音しながら確認していく予定です。
コストパフォーマンスは「機能の数」だけでは判断できない
格安機材を評価するとき、どうしても
「この価格なのにこんな機能まで付いている」
という話になりがちです。
もちろん、それも重要です。
しかし実際に音楽制作で使う場合、
機能の数と「使えるかどうか」は必ずしも同じではありません。
たとえば、
内蔵鍵盤はどの程度演奏できるのか。
プリセットはそのまま楽曲に使えるのか。
外部MIDI鍵盤からVelocityを付けて演奏すると印象は変わるのか。
エディットはストレスなく行えるのか。
ライン出力したときの音質やノイズはどうなのか。
DAWや他のハードウェアと組み合わせたときにも使いやすいのか。
こうしたところまで見て初めて、実際のコストパフォーマンスが分かります。
FM-1についても、
全部が価格以上に優れている
という評価になるとは限りません。
むしろ、
ある部分は価格相応。
ある部分は明確に割り切られている。
しかし、ある部分については驚くほど価格以上。
そんな製品なのではないかと予想しています。
この「どこにコストが掛かっているのか」を探ることも、今回のレビューの大きなテーマです。
ところが、このFM-1にはもう一つの顔がある

ここまでなら、
「安価な6オペレーターFMシンセ」
という話で終わります。
ところが現在、FM-1の周辺では非常に面白いことが起きています。
カスタムファームウェアです。
代表的なものの一つが「Felucca」。
このFeluccaを開発しているのは、神戸の楽器設計事務所Hügelton InstrumentsのLeo Kuroshita氏。つまり、日本人開発者によるカスタムファームウェアです。
約1万円の中国製シンセをベースに、日本の開発者がまったく別の楽器へ作り替え、それをGitHubでオープンソースとして公開している。この構図だけでも非常に興味深いものがあります。
Feluccaは、FM-1へ単純に機能を追加するプラグインのようなものではありません。
FM-1本体に入っている純正ファームウェアを、別のファームウェアへ書き換えて使用します。
現在のFeluccaは、FM-1をマルチエンジン/4トラック構成のシンセサイザー兼シーケンサーとして動作させるカスタムファームウェアへ発展しています。
つまり、
同じハードウェアなのに、中のソフトウェアを書き換えると別の楽器になる。
これは非常に面白いところです。
↓↓↓Feluccaに関する外部記事↓↓↓
神戸の開発者が小型シンセ「FM-1」の非公式ファームウェアを公開、音源は13種類
「機能追加」ではなく「楽器を入れ替える」
ここは少し誤解しやすいところです。
Feluccaをインストールしても、
「純正FM-1+Feluccaの機能」
になるわけではありません。
Feluccaを使用している間は、純正ファームウェアではなくFeluccaがFM-1を動かします。
イメージとしては、
FM-1に新機能を追加する
というより、
同じ筐体へ別の楽器をインストールする
と考えた方が近いでしょう。
ただし、Feluccaのインストーラーには純正ファームウェアへ戻すための仕組みも用意されています。
現在のFelucca公式案内では、M-VAVE純正V15へ戻す方法が案内されています。
ですから、
純正FM-1 ⇄ Felucca
という形で使い分けることも可能です。
もちろんカスタムファームウェアなので、導入は自己責任です。
Felucca側でも、書き込み中のUSB切断などによって正常起動できなくなった場合にはリカバリー作業が必要になる可能性が明記されています。
この辺りも、実際に導入するときには詳しく確認したいと思っています。
しかも、メーカー自身が「Open」に動き始めている
さらに面白い展開があります。
M-VAVE自身が「FM1 Open」というプロジェクトを公開しました。
FM1 Openでは複数のシンセシス方式、サンプル再生、8トラックのステップシーケンサー、ブラウザ上のWorkbench、さらに開発用SDKまで提供されています。
つまり、カスタムファームウェア文化がユーザー側だけで勝手に盛り上がっているのではなく、
メーカー自身もFM-1をオープンなプラットフォームとして展開し始めている
わけです。
こうなると、FM-1の価値は少し違って見えてきます。
単に、
「安価なFMシンセを1台買った」
という話ではありません。
ひとつのハードウェアを購入すると、その上で動く「楽器」そのものを入れ替えられる。
これは、ソフトウェアでは当たり前だった考え方を、低価格なハードウェアシンセへ持ち込んだようにも感じます。
純正ファームウェアも現在進行形で更新されている
FM-1は純正側も開発が止まっているわけではありません。
M-VAVE公式では、2026年10月21日にFM-1用ファームウェアV16が公開されています。
この記事を書いているのが10月22日なので、まさに昨日公開されたばかりです。
この点も非常に興味深いところです。
FM-1は完成して市場へ出て終わった製品ではなく、
純正ファームウェアも、コミュニティ製ファームウェアも、今まさに変化している途中
なのです。
そのためレビュー記事についても、一度書いて終わりというより、変化を追いながら更新していく方が向いている製品なのかもしれません。
まずは「純正FM-1」をしっかり確認してみる

とはいえ、いきなりFeluccaを入れるつもりはありません。
まずは届いた状態のFM-1を十分に使ってみます。
プリセット。
FM音源としてのエディット。
内蔵鍵盤。
外部MIDI鍵盤。
アルペジエーター。
シーケンサー。
エフェクト。
そしてライン出力したときの実際の音。
この辺りを確認した上で、
約1万円という価格を考えたとき、どこまで実用的なのか
を評価してみたいと思っています。
特に個人的に興味があるのは、外部MIDI鍵盤から弾いた場合です。
27鍵のシリコン鍵盤で弾いた印象と、通常のVelocity対応鍵盤から演奏した場合では、音源そのものに対する評価が変わる可能性があります。
「鍵盤の評価」と「音源の評価」は分けて考えた方が良いでしょう。
そして次はFeluccaへ
純正FM-1を一通り確認した後は、カスタムファームウェアにも挑戦してみる予定です。
まず候補になるのはFelucca。
純正のFMシンセから、どのように変化するのか。
操作感はどう変わるのか。
実際に音楽制作で使えるのか。
そして純正へ戻すところまで含めて確認できれば、かなり面白い検証になりそうです。
さらにFM-1周辺にはFeluccaだけでなく、グルーブボックス、VAシンセ、ドラムマシン、サンプラーなど、すでにさまざまな方向性のカスタムファームウェアが登場しています。
ここまで来ると、
「FM-1というシンセをレビューする」
だけでは収まりません。
「約1万円のハードウェアで、どこまで違う楽器を作れるのか」
というテーマへ広げることができます。
これは今後、シリーズとして追ってみたいと思っています。
約1万円のシンセから始まる、ちょっと面白い実験
最初にFM-1を注文したときは、正直なところ、
「話題になっている格安FMシンセを試してみよう」
くらいの感覚でした。
しかし調べていくうちに、少し印象が変わりました。
もちろん、まず重要なのは楽器としての完成度です。
安ければ何でも良いわけではありません。
音が良いのか。
弾いて楽しいのか。
制作に使えるのか。
操作してストレスがないのか。
その辺りは実際に使って判断したいと思います。
ただ、その先に、
ファームウェアを書き換えることで、同じハードウェアがまったく違う楽器へ変化する
という世界があります。
しかも現在はメーカー自身までOpen化へ動き始めています。
これは単なる「格安シンセレビュー」として終わらせるには、少しもったいない題材です。
まずは純正FM-1。
そしてカスタムファームウェア。
さらに、その先に何ができるのか。
動画とブログの両方で、しばらく追いかけてみたいと思います。