musicfreaks.jpの活動をご支援頂けましたら幸いです。ひとつひとつのご支援が大きな励みとなります。どうか、よろしくお願いいたします。
☆------------------------------------------------☆
Modarttが提案する、物理モデリングによるサウンドデザイン音源
音源を選ぶとき、私たちは一般的に「どのような音が出るのか」「どのような音楽に使えるのか」「操作しやすいか」といった点に注目します。
もちろん、これらは音源を評価するうえで重要な要素です。しかし、物理モデリングを利用した音源には、もうひとつ興味深い側面があります。
それは、音が生まれる仕組みそのものを、創作の出発点にできることです。
今回紹介するModarttの「Airteq」は、空気の流れと管の振る舞いを物理モデルによって再現しながら、現実に存在する楽器の音を忠実に再現することだけを目的とした音源ではありません。
空気、管、共鳴、気流の変化といった物理現象を操作し、そこからシネマティックな雰囲気、変化するテクスチャー、電子音楽的なサウンドまでを探っていくための音源です。
本記事では、まずAirteqの基本的な仕組みと機能を整理し、その後に「音楽実験」という視点から、この音源が持つ可能性について考えてみたいと思います。
- 1 Airteqとは何か?
- 2 空気の流れを音源そのものにする
- 3 Airteqの基本構造
- 4 Airteqを特徴づける3種類の空気反応
- 5 Airteqのモジュレーション機能
- 6 演奏表現とMIDIへの対応
- 7 プリセットとサウンドの方向性
- 8 Airteqはサンプラーでも、一般的なシンセサイザーでもない
- 9 Airteqを「音楽実験」として考える
- 10 「音色を選ぶ」から「物質を選ぶ」へ
- 11 Airteqで試してみたい音楽実験
- 12 物理モデルは「リアルな再現」のためだけではない
- 13 音楽制作における「音の理由」
- 14 Airteqは、音を「発見する」ための楽器
- 15 まとめ──空気の物理モデルから、未知の音楽へ
- 16 付録ー調声に最適なヘッドフォン!
Airteqとは何か?
Airteqは、フランスの音源メーカーModarttが開発した、物理モデリングによるサウンドデザイン音源です。
Modarttは、ピアノの構造を再現するPianoteqや、パイプオルガンの発音機構を扱うOrganteqなど、楽器の発音原理を物理モデルで構築する製品を開発してきました。
Airteqもその技術的な流れを受け継いでいますが、目的は単純な楽器の再現ではありません。
Airteqでは、仮想的な管に送り込まれる空気の量や反応をリアルタイムに変化させることで、通常の楽器音から抽象的な音響テクスチャーまで、幅広い音を作り出します。
ModarttはAirteqを、サンプルライブラリーでも従来型のシンセサイザーでもない、創造的な音の探求を目的とした楽器として位置づけています。
空気の流れを音源そのものにする
Airteqの中心となる技術は、**Dynamic Aerophone Modeling(DAM)**と呼ばれる動的なエアロフォン・モデリングです。
これは、Organteqで使用されているパイプオルガンの物理モデルを発展させ、各パイプへの空気供給をリアルタイムで制御できるようにしたものです。
通常のシンセサイザーでは、音源から出た波形にフィルターやエフェクトを加えることで音色を変化させることが多くあります。
一方、Airteqでは、単にフィルターを動かすのではなく、音を発生させている物理モデル自体の挙動を変化させることができます。
空気の供給量が変われば、音の明るさ、音程の安定性、倍音の構成、発音の状態などにも変化が現れます。
つまり、音の表面だけを加工するのではなく、音が生まれる過程そのものに働きかける設計になっているのです。
Airteqの基本構造
仮想的なパイプを組み合わせて音を作る
Airteqでは、さまざまなタイプの仮想パイプを組み合わせて、ひとつの音色を構成します。
用意されているパイプには、主に次のような種類があります。
-
Flue(フルー):フルートのような発音構造を持つパイプ
-
Reed(リード):リードの振動を利用するタイプのパイプ
-
Mixture(ミクスチャー):複数の音高成分を組み合わせるタイプ
それぞれのパイプは、空気の供給に対して異なる反応を示します。
柔らかく空気感のある音、リード楽器を思わせる音、複数の音が重なった厚みのある音などを組み合わせることで、単独のパイプだけでは得られない音色を構築できます。
Airteqには、最大5つのストップスロットを使って音を組み立てる仕組みがあり、それぞれの音量、パン、トランスポーズ、チューニングなども個別に設定できます。
「ストップ」とは?
Airteqにおけるストップは、音域全体にわたって音色の一貫性を持つパイプの集合体です。
パイプオルガンのストップに由来する考え方ですが、Airteqではその仕組みを、伝統的なオルガン音色の再現だけに限定していません。
複数のストップを組み合わせることで、ひとつの仮想楽器を設計するように音を作ることができます。
これは、プリセットを選んで音を呼び出すだけではなく、どのような発音体を組み合わせるかを考える作業にもつながります。
Airteqを特徴づける3種類の空気反応
Airteqの面白さは、空気の供給量を変化させたとき、すべてのパイプが同じように反応するわけではないという点にあります。
フルー系のパイプには、主に次の3つの空気反応が用意されています。
Steady Pitch Pipes
Steady Pitchタイプは、空気量が変化しても音程が比較的安定するように設計されたパイプです。
その一方で、空気量に応じて音色は大きく変化します。
このため、音程を維持しながら音の明るさや質感を変化させたい場合に利用できます。シンセサイザーに近い扱いやすさと、物理モデルに由来する音色変化を両立したタイプといえるでしょう。
Glissando Pipes
Glissandoタイプは、空気量の変化に応じて音程や音色が緩やかに変化します。
Overblowタイプほど急激な発音状態の変化はありませんが、空気の操作によって、音程の揺れや音色の変化を表現できます。
完全に固定された音程ではなく、わずかに動き続ける音を作りたい場合に適しています。
Overblow Pipes
Overblowタイプは、空気の供給量によって音の状態が大きく変化するパイプです。
空気量が少ないときには、風や息のようなエオリアン系の音が現れることがあります。一方、空気量を増やすと、音程が上昇したり、オーバーブローによって別の発音状態へ移行したりします。
このタイプでは、ひとつのパイプでありながら、空気の状態によって複数の表情を引き出せます。
音程が安定した音源として扱うだけではなく、不安定さや発音状態の変化そのものを音楽的に利用することができるタイプです。
この3種類の反応は、単なる音色の違いではありません。
空気を変化させたとき、音がどのような現象を起こすのかという、発音モデルそのものの違いです。
Airteqのモジュレーション機能
Airteqには、空気の供給量や音色の変化をコントロールするための、複数のモジュレーション機能が搭載されています。
主な機能は次のとおりです。
|
機能 |
役割 |
|---|---|
|
Main Air Envelope |
楽器全体の空気供給量を時間的に変化させる |
|
Envelopes |
個別のパラメーターをADSR形式で変化させる |
|
LFO |
周期的な揺れや変化を加える |
|
Gesture Modulators |
演奏操作に応じた表現を作る |
|
Macros |
複数のパラメーターをひとつの操作で同時に動かす |
Main Air Envelope
Main Air Envelopeは、Airteq全体に供給される空気の量をコントロールします。
一般的なシンセサイザーのアンプエンベロープに近い役割を持ちますが、Airteqでは音量だけを変化させるのではありません。
空気供給そのものを変えるため、発音の状態や音色の変化にも関係します。
例えば、音の立ち上がりで空気がゆっくり増えていくように設定した場合、単純なフェードインとは異なる、発音体が徐々に動き始めるような印象を作ることができます。
LFOとエンベロープ
LFOを利用すれば、空気の供給量や音色を周期的に変化させることができます。
緩やかな揺れを加えて持続音に動きを与えることもできますし、より速い変化を使って、リズミックなパルスや機械的な反復感を作ることも可能です。
エンベロープでは、音の発生から減衰までの時間的な変化を設計できます。
ここで重要なのは、変化の対象が単なる音量やフィルターだけではないということです。
空気がどのように送り込まれ、どのように変化するかを設計することで、音の動きそのものを作ることができます。
Macros
Macrosでは、複数のパラメーターをひとつのノブなどにまとめて割り当てられます。
例えば、ひとつの操作に対して、空気量、音量、音色、空間的な広がりなどを同時に変化させることができます。
この機能を使うと、細かなパラメーターを個別に操作するだけでなく、ひとつのジェスチャーによって音の状態を大きく変えることが可能です。
演奏表現とMIDIへの対応
Airteqは、音色を作り込んで再生するだけの音源ではありません。
演奏時の操作にも対応しており、ベロシティ、ピッチベンド、アフタータッチ、MIDI Polyphonic Expression(MPE)などを利用できます。
さらに、通常のMIDIキーボードだけでなく、ウインドコントローラーやブレスコントローラー向けのMIDIマッピングも用意されています。
これはAirteqの発音原理を考えるうえで、非常に興味深い部分です。
空気の流れを中心にした音源であるならば、鍵盤を押す操作だけでなく、息や圧力のような連続的な身体表現と組み合わせることで、より直感的な演奏が可能になると考えられます。
例えば、ブレスコントローラーを使って空気の供給量を操作すれば、音源の中心的なパラメーターを、演奏者の呼吸に近い動作でコントロールできます。
Airteqは、音源の構造だけでなく、演奏者がその物理モデルにどのように関わるかという点にも広がりを持っています。
プリセットとサウンドの方向性
Airteqには、170種類以上のプリセットが用意されています。
プリセットは、現実の管楽器やパイプ音を思わせるものだけでなく、変化するパッド、シネマティックなテクスチャー、空気感のあるサウンド、リズミックな音など、さまざまな方向性に分類されています。
マニュアルでは、プリセットのサウンドタイプを大きく次の3種類に分類しています。
Natural Pipes
現実のパイプ楽器や管楽器を思わせる音、あるいは実在していても不思議ではない楽器の音を目指したプリセットです。
Airteqの物理的な基盤を、比較的わかりやすく感じられるカテゴリーといえます。
Cinematic Textures
空気の変化を利用し、伝統的な楽器音から離れた、変化する音響空間や抽象的なサウンドスケープを作るプリセットです。
持続音の中で音色が変化し続けるものや、映像的な雰囲気を持つものなどが含まれます。
Electronic Music
安定した音程を持つパイプなどを利用し、ベース、リード、パッドなど、電子音楽に適した音を作るプリセットです。
このカテゴリーがあることで、Airteqは必ずしも「生楽器らしい音」や「環境音的な音」だけに限定されません。
物理モデルを基盤としながら、電子音楽の制作にも利用できるよう設計されています。
Airteqはサンプラーでも、一般的なシンセサイザーでもない
Airteqを理解するうえで、ここは重要なポイントです。
Airteqはサンプルを再生する音源ではありません。音は物理モデルによってリアルタイムに生成されます。
そのため、あらかじめ録音された音を再生するのではなく、演奏やパラメーターの変化に応じて、発音モデルがその場で反応します。
また、一般的なシンセサイザーのように、オシレーターやフィルターを中心に音を設計する音源とも異なります。
もちろん、音楽制作の結果としては、パッドやベース、リードなど、シンセサイザーと共通する用途もあります。
しかし、音を作る際の出発点が異なります。
一般的なシンセサイザーでは、波形、フィルター、エンベロープなどを組み合わせて音色を設計することが多いでしょう。
Airteqでは、そこに加えて、
-
どのようなパイプを使うのか
-
空気量に対してどのように反応するのか
-
発音状態がどのように変化するのか
-
音をどのような時間的変化に置くのか
といった、発音体の振る舞いを考える必要があります。
この違いが、Airteqを単なる音色生成ツールとは異なるものにしています。
Airteqを「音楽実験」として考える
ここからは、Airteqを単なる音源紹介の枠から少し広げて考えてみます。
Airteqの面白さは、完成された楽器の音を選ぶことだけではなく、物理現象を出発点として、そこから音を発見できることにあります。
私たちは普段、音楽を作るときに次のような順序で考えることが多いのではないでしょうか。
作りたい曲や感情がある ↓ 必要な音色を考える ↓ シンセサイザーや音源から音を選ぶ
これは非常に自然な制作方法です。
しかし、物理モデリング音源では、別の方向から音楽を考えることもできます。
表現したい感情やイメージがある ↓ その感情を連想させる物理現象を考える ↓ 物理モデルを操作する ↓ そこから生まれた音を音楽に組み込む
例えば、怒りという感情を音にするとき、最初から「激しいシンセ音」や「歪んだ音」を探すのではなく、次のように考えてみます。
-
何か硬い物体を強く叩く
-
金属が衝突する
-
張り詰めたものが限界に達する
-
圧力が内部に蓄積する
-
何かが急激に破裂する
悲しみであれば、次のような物理的なイメージが考えられます。
-
風が空洞の中を通り抜ける
-
誰もいない空間に音だけが残る
-
細い管の中で息がかすかに揺れる
-
音が発生するものの、十分な力を持たず消えていく
-
遠くで鳴った音が空間の中に残響する
もちろん、これらのイメージが唯一の正解というわけではありません。
大切なのは、感情を直接音色に置き換えるのではなく、感情を物理現象へ変換してみることです。
「音色を選ぶ」から「物質を選ぶ」へ
Airteqを使うとき、私たちは音色を選ぶだけでなく、ある意味では物質や現象を選んでいるとも考えられます。
音は、現実世界において必ず何らかの物理的な動きから生まれます。
弦が振動する。
空気が動く。
膜が揺れる。
金属が共鳴する。
木材や空洞が振動を支える。
こうした物理的な要素が組み合わさることで、私たちは音を聴いています。
Airteqの場合、その中心にあるのは、管と空気の関係です。
空気の量が変わると、音の状態が変化する。
管の種類が変わると、反応の仕方が変わる。
空気が増えたときに音程が変わるものもあれば、音程は保ちながら音色が変化するものもある。
このような仕組みを意識しながら音を作ると、音色を単なる「明るい」「暗い」「太い」「細い」といった形容詞だけで捉えるのとは異なる視点が生まれます。
例えば、ある音を「暗いパッド」と呼ぶ代わりに、
空気の流れが弱く、空洞の中でかすかに振動しているような音
と捉えることができます。
あるいは、音が明るく変化する様子を、
管の中に送り込まれる空気の圧力が高まり、発音の状態が変化していく
と考えることもできます。
このような捉え方は、音の印象を説明するためだけの言葉ではありません。
次に音を作るときの、具体的な発想の手がかりにもなります。
Airteqで試してみたい音楽実験
Airteqを使い始める際には、最初から完成された音色を作ろうとしなくてもよいのではないでしょうか。
むしろ、普段の音楽制作ではあまり採用しないような音や、使い道がすぐにはわからない音にも耳を向けてみることが重要だと思います。
実験1:プリセット名を見ずに音を聴く
まずはプリセット名やカテゴリーを意識しすぎず、音そのものを聴いてみます。
その音が、
-
どのような物体を連想させるか
-
どのような空間で鳴っているように感じるか
-
空気がどのように動いているように聞こえるか
-
音が安定しているのか、揺らいでいるのか
-
生き物のように変化しているのか
といった点を考えてみます。
プリセット名を先に見てしまうと、音の聴き方が名前に引っ張られることがあります。
最初は説明を取り除き、音から自由にイメージを広げることが有効です。
実験2:空気量を極端に変化させる
Airteqでは、空気の供給量を変化させることが重要な操作になります。
そこで、通常の音楽制作で使いやすい範囲だけでなく、あえて極端な設定も試してみます。
-
空気量をほとんど与えない
-
空気量を急激に増やす
-
ゆっくりと空気を送り込む
-
空気量を周期的に揺らす
-
音程が不安定になる領域を利用する
こうした操作によって、音がどのような状態に変わるのかを確認します。
ここでは「きれいな音を作る」ことよりも、モデルがどのような反応を示すのかを観察することが目的です。
実験3:ひとつのパイプから、どこまで音を引き出せるか
複数のパイプを組み合わせる前に、ひとつのパイプを徹底的に試す方法も考えられます。
同じパイプであっても、空気量、エンベロープ、LFO、演奏操作などを変えることで、異なる音の状態を引き出せる可能性があります。
ひとつの発音体の中に、どの程度の音響的な広がりがあるのかを探る実験です。
これは、プリセットを次々に切り替える使い方とは異なり、音源の内部構造に耳を向ける方法といえるでしょう。
実験4:感情から物理現象を考える
特定の感情をひとつ選び、その感情を物理現象に変換してみます。
例えば「孤独」をテーマにした場合、
-
広い空間の中にひとつだけ音がある
-
空気が抜けていく
-
音が遠くへ消えていく
-
発音はしているが、十分な力を持たない
-
何度も繰り返すうちに音の状態が変わっていく
といったイメージを考えられます。
そこから、Airteqのパイプや空気量、時間的変化を組み合わせていきます。
この方法では、最初から「孤独に聞こえるプリセット」を探すのではなく、孤独という感情をどのような現象として表現できるかを考えます。
物理モデルは「リアルな再現」のためだけではない
物理モデリングという言葉からは、実在する楽器をリアルに再現する技術を連想することが多いかもしれません。
実際、物理モデルは楽器の構造や発音原理を再現するために有効な方法です。
しかし、Airteqが示しているのは、物理モデリングにはもうひとつの方向性があるということです。
それは、現実の仕組みを出発点にしながら、現実には存在しない音や楽器を想像することです。
Airteqの音は、管と空気という物理的な基盤に根ざしています。
しかし、空気の供給量やパイプの組み合わせ、変調の方法によっては、必ずしも現実の楽器そのものとはいえない音へと展開していきます。
つまり、現実の物理法則から離れて自由に音を作るのではなく、現実の物理現象を出発点として、そこから想像力を広げていくのです。
この点に、Airteqの独自性があります。
現実の楽器を模倣することと、物理現象から新しい音を発見すること。
このふたつは対立するものではありません。
むしろ、物理現象を理解しているからこそ、そこから現実にはない表現を考えることができるのだと思います。
音楽制作における「音の理由」
音楽作品の中で使われる音には、必ずしも明確な理由が必要なわけではありません。
偶然出会った音を使うことも、直感的に音色を選ぶことも、音楽制作の大切な方法です。
ただし、音が生まれるまでの道筋を自分の中で持っていると、作品に対する理解が深まる場合があります。
例えば、ある音を使った理由が、
何となく雰囲気がよかったから
という場合もあるでしょう。
一方で、
この場面では、感情が内側に蓄積していくような状態を表現したかった。そこで、空気が徐々に増加し、発音状態が変化していくパイプを使った
という考え方もできます。
聴き手がその制作過程を知る必要はありません。
作品を聴く人が、制作者の意図をすべて理解する必要もありません。
それでも、制作者自身が音の成り立ちについて考え、選択の道筋を持っていることは、創作の密度につながる可能性があります。
音色を選ぶだけではなく、
-
なぜこの音なのか
-
なぜこの動きなのか
-
なぜこの音の変化が必要なのか
-
この音は、どのような物理的イメージから生まれたのか
と考えること。
Airteqは、こうした問いを自然に引き出してくれる音源なのかもしれません。
Airteqは、音を「発見する」ための楽器
Airteqは、最初から用途が明確な楽器とは少し違います。
ピアノであれば、鍵盤を弾いて音程と和音を演奏する。
ギターであれば、弦を弾き、押さえ、音の表情を作る。
管楽器であれば、息の流れや口の使い方によって音を表現する。
それぞれの楽器には、演奏方法と音楽的な役割が比較的明確に存在します。
一方、Airteqでは、空気とパイプの物理モデルを操作することによって、どのような音楽的用途が生まれるかを探っていきます。
パッドとして使えるかもしれません。
ベースやリードとして使えるかもしれません。
映像音楽の背景に置く音になるかもしれません。
あるいは、一般的な音楽制作では用途がわからない音が、作品の中心的な要素になる可能性もあります。
その意味でAirteqは、完成された音色を提供するだけの音源というよりも、音の可能性を探るための実験装置に近い性格を持っていると感じます。
音源を使って何かを再現するのではなく、音源を操作しながら、まだ名前のついていない音を発見していく。
そこにAirteqを使う面白さがあるのではないでしょうか。
まとめ──空気の物理モデルから、未知の音楽へ
Airteqは、空気の流れ、管の構造、共鳴の変化を物理モデルによって再現し、そこからさまざまな音響表現を生み出す音源です。
複数のパイプタイプ、空気反応の違い、エンベロープやLFO、Macros、MPEへの対応など、音を細かく設計するための機能も備えています。
しかし、Airteqの魅力は、機能の多さだけにあるわけではありません。
その中心にあるのは、音を作るときの視点を変えられることです。
音色を選ぶのではなく、物理現象を選ぶ。
完成された音を探すのではなく、音が生まれる過程を操作する。
感情を直接音色に変換するのではなく、感情から物質や現象を想像し、その結果として音を生み出す。
こうした制作方法は、すべての音楽制作に必要なものではありません。
それでも、いつもとは異なる発想で音を作りたいとき、Airteqは興味深い出発点になりそうです。
物理モデリングは、現実の楽器を忠実に再現するためだけの技術ではありません。
現実の物理現象を手がかりにして、まだ存在しない音や、まだ名前のついていない表現を探すための技術にもなり得ます。
Airteqは、空気と管の世界から、どこまで新しい音を発見できるのか。
その答えは、プリセットの一覧や仕様表だけではなく、実際に音を出し、パラメーターを動かし、自分自身の耳で試していく過程の中にあるのだと思います。
製品情報
方式:物理モデリング(DAM)
主な素材:空気・管・共鳴
プリセット:170種類以上
対応形式:Standalone / VST3 / AU / AAX / LV2
価格:99ユーロ / 99ドル
musicfreaks.jpの活動をご支援頂けましたら幸いです。ひとつひとつのご支援が大きな励みとなります。どうか、よろしくお願いいたします。
付録ー調声に最適なヘッドフォン!
付録として、エムフリお気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!
今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。
僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。
その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。
ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。
♡購入までの経緯
最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。
当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするのですが、聞き疲れしないので気に入っていました。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。
気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。
Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。
♡調声に最適
結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!
丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。
同じデザインで、ST-90-05とST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。
低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。
最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。
とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!
☆------------------------------------------------☆
この記事が気に入ったら
ツイッターでリツイート
Facebookでシェアしてくださいね☺️