Instrument XとAudio Modeling、何が違うのか?


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Instrument XとAudio Modeling、何が違うのか?

Editor screenshot R0MNAx61.

「AIに演奏してもらう」or「自分で演奏する」

Dreamtonicsから新しい音源ソフトウェア「Instrument X」が登場しました。

初めてその機能を見たとき、私が感じたのは「これはAudio Modelingと少し似ている」ということでした。

どちらも、従来のサンプルライブラリとは異なるアプローチで、生楽器の演奏やニュアンスをコンピューター上で再現しようとしている。

しかし、詳しく見ていくと、両者が目指している方向はかなり違います。

私は以前からAudio Modelingの音源を使用しており、現在ではその多くの製品を制作に取り入れています。

だからこそ今回は、単純に「Instrument XとAudio Modelingのどちらが優れているのか」という比較ではなく、

「そもそも、この2つは何を再現しようとしているのか?」

というところから考えてみたいと思います。


Instrument Xは「演奏そのもの」を生成する

Instrument Xの大きな特徴は、Dreamtonicsが掲げる「Neural Acoustic Modeling」です。

従来のサンプル音源では、例えばバイオリンの「C4のレガート音」を録音しておき、MIDIノートに応じてそのサンプルを再生するという考え方が基本になります。

一方、Instrument Xは単純に録音された音を並べるのではなく、

  • 音程
  • 音価
  • フレーズ
  • ダイナミクス
  • アーティキュレーション
  • 前後の音との関係

などをもとに、**「このフレーズなら、楽器奏者はどのように演奏するのか」**という部分まで含めて音を生成する方向にあります。

ここが非常に興味深いところです。

つまり、Instrument Xでは、

「この音を鳴らしてください」

という指示だけではなく、

「このフレーズを、この楽器らしく演奏してください」

という、より演奏者に近い仕事をAIに任せることができます。


Audio Modelingは「自分が演奏者になる」

これに対してAudio ModelingのSWAMシリーズは、かなり違った思想を持っています。

SWAMの魅力は、音源を操作するというよりも、仮想的な楽器を自分自身で演奏しているような感覚にあります。

例えば弦楽器であれば、

  • Bow Pressure
  • Bow Speed
  • Bow Position
  • Vibrato
  • Expression
  • Portamento
  • Pizzicato

など、実際の演奏に関係するパラメータをリアルタイムに操作できます。

これは単に「音量を変える」という話ではありません。

弓の動かし方を変えれば音色が変わり、弓の圧力を変えれば音の立ち上がりや質感が変わる。

つまり、

演奏者の身体的な操作 → 楽器の反応 → 音響結果

という因果関係をコンピューター上で再現しているわけです。

そのためSWAMでは、MIDI CCなどを細かく操作することで、自分の意図した演奏表現を作り込むことができます。


「AI vs Physical Modeling」では説明できない

ここで注意したいのは、

Instrument X=AI
Audio Modeling=Physical Modeling

と単純に分けてしまわないことです。

Audio Modelingの製品も、現在では単純なPhysical Modelingだけで構成されているわけではありません。

例えばSWAM String Sectionsでは、Physical Modelingに加えてSample MorphingやBehavioral Modelingなどを組み合わせたHybrid Modelingが採用されています。

したがって、両者の違いを技術名称だけで説明するよりも、

「演奏を誰が作るのか」

という観点で考えた方が本質に近いと思います。


Instrument Xは「演奏をAIに任せる」

Instrument Xでは、楽譜やMIDIを入力した後、AIがその情報をもとに演奏を生成していきます。

ここには非常に大きなメリットがあります。

例えばオーケストラのパートを大量に作る場合、一つひとつの音符について、

「ここは少し弓を強くして……」

「ここからビブラートを増やして……」

「この音は少しポルタメントさせて……」

とMIDI CCを描いていくのは、かなりの作業になります。

Instrument Xは、こうした「演奏として成立させるための作業」の一部をAIに任せることができます。

作曲家にとっては、これは非常に大きな意味を持ちます。

演奏表現を細かく設計することよりも、まず音楽そのものを作ることに集中できるからです。


一方、SWAMは「演奏する自由」がある

SWAMの魅力は、まさにその逆方向にあります。

AIに「自然な演奏」を任せるのではなく、

自分がどんな演奏をさせたいのかを決める。

ここにSWAMの面白さがあります。

例えば、

「この一音だけ少し強く弾きたい」

「ここで弓を荒くしたい」

「ビブラートを途中から入れたい」

「最後の音だけ少しピッチを揺らしたい」

といった、人間の演奏者なら当然行うような細かな判断を、自分自身で作り込めます。

その意味ではSWAMは、

音源というより、仮想楽器

と考えた方がしっくりくることがあります。


Instrument Xの「Smart Articulation」が面白い

Instrument Xで特に興味深い機能の一つがSmart Articulationです。

一般的なオーケストラ音源では、奏法を切り替えるためにKey Switchを使うことが多くあります。

例えば、

C0=Legato
C#0=Staccato
D0=Pizzicato

といった具合です。

もちろんこれは便利なのですが、奏法を「スイッチ」として考えている部分があります。

Instrument Xでは、楽器固有の奏法をより演奏の流れの中で扱い、複数のアーティキュレーションを組み合わせていくことができます。

ここには、

「この音は何という奏法なのか?」

ではなく、

「この瞬間、楽器がどのように演奏されているのか?」

という発想が見えてきます。

この部分は、今後さらに詳しく検証してみたいところです。


もう一つ気になる「AI Performance Retakes」

個人的に非常に面白いと思ったのが、AI Performance Retakesです。

これは、生成された演奏を別のテイクとして再生成するという発想です。

例えば同じフレーズでも、

「もう少し人間らしく」

「少し違うニュアンスで」

という方向に演奏を作り直すことができます。

これはSWAMとはかなり違う考え方です。

SWAMなら、

「このフレーズをもう一度違う演奏にする」

ためには、自分でCCやピッチ、アーティキュレーションなどを変更していきます。

Instrument Xでは、

「このフレーズを、別の演奏として生成してみる」

ということができる。

つまり、Instrument XではAIが単に「音を鳴らすエンジン」ではなく、演奏者そのものに近い存在になりつつあります。


それでもSWAMには大きな強みがある

では、Instrument Xが登場したことでSWAMの存在意義が薄くなるのでしょうか。

私は、むしろ逆だと思っています。

SWAMには「人間が演奏をコントロールする」という強烈な強みがあります。

特にソロ楽器では、この違いが大きくなります。

例えば、一本のバイオリンがメロディを演奏しているとします。

その演奏を、

「ここは少し前のめりに」

「この音は強く」

「次の音に滑り込ませて」

「最後は少し息を抜くように」

と自分で演奏表現を作っていく。

このときSWAMは非常に強力です。

AIが「自然な演奏」を生成することと、

自分が意図した演奏を作ること

は、似ているようで全く違うからです。


実は「リアルさ」の競争ではない

ここまで考えてみると、今回の比較を

「どちらがリアルなのか?」

という一つの尺度で評価することには、あまり意味がないように思えてきます。

なぜなら、

Instrument Xは、

「AIが考えた自然な演奏」

を作ることに強く、

Audio Modelingは、

「人間が意図した演奏」

を作ることに強いからです。

どちらもリアルさを目指している。

しかし、その「リアルさ」に至る道が違う。


空間表現にも共通点がある

さらに面白いのが、空間表現です。

Instrument Xには複数のマイクポジションを扱う仕組みがあり、Spot、Decca Tree、Stereo Room、Ambientなど、録音環境を意識した音作りができます。

一方、Audio ModelingにはAmbiente Room Simulatorがあります。

私自身、Ambienteを試してみてかなり面白いと感じたのですが、SWAM音源を同じ空間に配置していくことで、単体の楽器音源を超えて「アンサンブル全体の空間」を作ることができます。

ここでも両者には共通する部分があります。

つまり、

楽器そのものを再現するだけではなく、その楽器が存在している空間まで含めて音楽を作る。

この方向性は、これからのソフトウェア音源ではさらに重要になっていくのかもしれません。


Instrument XとSWAMは「競合」なのか?

現時点では、私は完全な競合製品とは考えていません。

むしろ、

Instrument X

Performance Generator

AIに演奏を生成してもらう。

Audio Modeling / SWAM

Performance Instrument

自分自身が仮想楽器を演奏する。

このように考えると非常に分かりやすいと思います。

例えば、

大量のオーケストレーションを短時間で作りたい

のであれば、Instrument Xの考え方は非常に魅力的です。

一方、

一本のソロバイオリンに自分の感情を込めたい

のであれば、SWAMのような「自分で演奏する」音源には大きな意味があります。


Instrument Xは誰が演奏するのか?

ここまでInstrument XとAudio Modeling / SWAMの違いを見てくると、もう一つ興味深いことに気づきます。

それは、Instrument Xを単純に「AI音源」と呼んでしまってよいのだろうか、ということです。

現在、生成AIによる音楽制作は急速に進化しています。

例えば、プロンプトから楽曲そのものを生成するサービスでは、作曲、編曲、演奏、歌唱、サウンドデザインといった、それまで人間が担っていた多くの工程をAIがまとめて処理できるようになりました。

これは非常に大きな技術革新です。

一方で、

「自分は本当に音楽を作ったのだろうか?」

という疑問を持つクリエイターがいるのも、決して不思議なことではないと思います。

Instrument Xは、そこに少し違ったAIとの付き合い方を提示しているように感じます。

AIに、

「曲を作って」

と依頼するのではなく、

「自分が作ったこの音楽を、この楽器で演奏してほしい」

と依頼する。

つまり、人間が作曲者として音楽の方向性を決め、その演奏の部分をAIに担ってもらうという考え方です。

これはAIを「創作者の代替物」として使うのではなく、「仮想的な演奏者」として利用するという発想とも言えるでしょう。

もちろん、Instrument XをどこまでAIに任せるかによって、人間の関与の度合いは変わります。

MIDIを入力してAIが生成した演奏をそのまま使うこともできます。

一方で、何度もRetakeを行い、気に入った演奏を選び、さらに人間が編集することもできます。

そう考えると、Instrument Xは「AIが作った音楽」ではなく、

人間が作った音楽を、AIという仮想演奏者を通して表現するためのツール

として捉えることもできるのではないでしょうか。

そして、この考え方はAudio Modeling / SWAMとの比較によって、さらに明確になります。

SWAMでは、人間が仮想楽器を直接演奏します。

Instrument Xでは、人間が作った音楽をAIに演奏してもらう。

言い換えれば、

SWAMは「自分が演奏者になる」。

Instrument Xは「AIを演奏者にする」。

この違いは、単なる音源の機能差ではありません。

これからの音楽制作において、人間とAIがどのような役割分担をするのかという、より大きなテーマにつながっているように思います。

AIによる音楽生成そのものに違和感を持っていたクリエイターにとっても、こうした「人間が創作の中心に残りながらAIを利用する」という方法は、新しい選択肢になるかもしれません。


これは、もう少し考えてみたいテーマ

ただし、ここで結論を出すのはまだ早いでしょう。

「AIに演奏してもらうこと」と「人間が演奏すること」には、それぞれどのような違いがあるのか。

AIが生成した「自然な演奏」と、人間が意図的に作った「不自然かもしれない演奏」では、音楽表現にどのような違いが生まれるのか。

そして、AIに任せる範囲が広がったとき、私たちは作品の中にどこまで「自分自身」を残すことができるのか。

これはInstrument Xだけの話ではありません。

これからの音楽クリエイターと生成AIの関係そのものを考える上で、非常に重要なテーマになっていくように思います。

今回はInstrument XとAudio Modelingの比較を入り口として、この問題に少し触れてみました。

「AIに音楽を作ってもらう」のではなく、「AIと一緒に音楽を作る」とはどういうことなのか。

このテーマについては、Instrument Xの実際の使用感や、AIが生成した演奏と人間が作った演奏の比較なども交えながら、改めて別の記事で深く考えてみたいと思います。


そして、ここからが本当に面白い

私がこの比較に興味を持っている最大の理由は、単純な機材比較ではありません。

これは、

「これからコンピューター上で音楽を作るとき、私たちはどこまで演奏をAIに任せるのか?」

という問題につながっているからです。

これまでは、

「サンプルを選ぶ」

「MIDIを打ち込む」

「CCを描く」

という作業が中心でした。

しかし、Instrument Xのような音源が進化すると、

「この曲を、この楽器で、この雰囲気で演奏して」

というところまでコンピューターに任せられるようになります。

一方で、SWAMのような音源は、

「コンピューターの中に、自分が演奏できる楽器を作る」

という方向に進んでいます。

どちらが正解という話ではありません。

むしろ、作曲する人、編曲する人、演奏する人によって、最適な答えは変わってくるでしょう。


まとめ

現時点で私が感じている両者の違いを一言でまとめるなら、

Instrument Xは「演奏を生成する」。

Audio Modelingは「演奏する」。

です。

そして、この違いは単なる技術的な違いではなく、音楽制作そのものに対する考え方の違いなのだと思います。

だからこそ、私はこの2つを実際に同じフレーズで鳴らし、比較してみたいと思っています。

同じメロディを、

  • Instrument Xに演奏させる
  • SWAMで自分で演奏する
  • どちらも同じテンポ、同じ音域、同じ楽器条件にする
  • そして完成した演奏を聴き比べる

そうすると、スペック表だけでは分からない違いが見えてくるはずです。

「どちらがリアルなのか?」ではなく、
「どちらの方法で、自分が作りたい音楽に近づけるのか?」

今後はInstrument Xの具体的な機能を一つずつ確認しながら、Audio Modeling / SWAMとさらに深く比較してみたいと思います。

 

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付録ー調声に最適なヘッドフォン!


付録として、エムフリお気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!

今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。


僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。

その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。

ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。

購入までの経緯

最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。

当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするのですが、聞き疲れしないので気に入っていました。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。

気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。

Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。

調声に最適

結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!

丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。

同じデザインで、ST-90-05ST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。

低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。

最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。

とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!


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