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ギターやベースの周辺機器というと、シールドやストラップ、ケースなどにはこだわっても、「スタンドは楽器が置ければそれでいい」と考える人は多いのではないでしょうか。
私自身、これまでギタースタンドに対してそこまで強いこだわりを持っていたわけではありません。
ところが今回、山崎実業の「ハンギングギタースタンド タワー」を購入してみて、その考え方が少し変わりました。
1本用のギタースタンドとして考えると、決して安くない
今回購入したのは、towerシリーズの「ハンギングギタースタンド タワー」です。
メーカー希望価格は税込11,000円。
しかも複数本をまとめて置けるタイプではなく、基本的には楽器1本のためのスタンドです。
ギターを床に置いておくだけなら、もっと手軽で安価なスタンドはいくらでもあります。その意味では、かなり贅沢な製品に見えるかもしれません。
しかし実物を組み立ててみると、まず印象に残ったのがその「重さ」でした。
本体サイズは幅28×奥行24×高さ114.3cmとかなりスリムなのですが、重量は約5.38kgあります。ホルダー部の耐荷重は6kg。本体とトレーはスチール製で、緩衝材や滑り止めにはシリコーンゴムが使われています。
見た目は細い一本柱なのに、実際に楽器を掛けると想像以上に安定しています。
この「場所を取らないのに重量がある」という設計が、実際に使ったときの安心感につながっているのでしょう。
楽器そのものが綺麗に見える
このスタンドの大きな特徴は、一本柱の支柱にネックを掛ける構造です。
一般的なギタースタンドのように楽器の周囲へフレームが大きく張り出さないので、置いたときに非常にスッキリ見えます。
山崎実業自身も、「収納」だけでなく、楽器を浮かせて美しく「ディスプレイ」することを製品コンセプトとして打ち出しています。アコースティックギター、エレキギター、ベースなどに対応し、ホルダーは回転式なので、さまざまなヘッド形状に合わせやすくなっています。
実際に使ってみると、この「ディスプレイ」という考え方が意外に重要でした。
スタンドそのものが目立つのではなく、そこに掛けたギターやベースが主役になります。
楽器を置くというより、楽器を美しく見せるための台座に近い感覚です。
マグネット式トレーも便利。ただし私は少し手を加えた
もう一つ特徴的なのが、支柱の好きな位置に取り付けられるマグネット式トレーです。
メーカーでは、ピックなどの小物だけでなく、ヘッドホンを掛けたり、タブレットや楽譜を置いたりする用途も想定しています。トレーの耐荷重は750gです。
iPadなどに楽譜を表示して演奏する人には便利な機能だと思います。
ただ、実際に使ってみて一つ気になったところがありました。
トレーの左右にはシリコーンの緩衝材が付いているのですが、前面にはスチール部分が露出しています。
普通に使っていれば問題になることは少ないと思いますが、ギターやベースを掛けたり外したりするとき、ボディがここへ当たる可能性はあります。
そこで私は、家具などに使用する保護材を前面に貼りました。
ほんの少し手を加えただけですが、これで高価なギターやベースを掛け外しするときにも、かなり安心して使えるようになりました。
良い製品だから何も考えずそのまま使う、というより、自分の所有する楽器や使い方に合わせて少し調整する。
私はこういう付き合い方の方が好きです。
接触面には注意したい――特にラッカー塗装
もう一点、ギタースタンドを使用するときに忘れてはいけないのが、楽器とスタンドとの接触面です。
私は今回、ネックを支える部分と楽器の間にコットンクロスを挟んで使っています。
見た目だけを考えれば、そのまま掛けた方がもちろんスッキリします。しかし、高価な楽器を長時間置いておくのであれば、私は安心感を優先したいと考えています。
特に注意したいのがラッカー塗装です。
これは今回のtowerスタンドだけの話ではありません。
Fenderはラッカー仕上げの楽器について、プラスチック、合成素材、ギタースタンドなどに使われるゴム系素材との長時間接触を避けるよう公式に注意しています。素材がラッカーと反応し、フィニッシュを傷める可能性があるためです。
Gibsonはさらに、この現象を「stand damage」としてFAQで説明しています。ギタースタンドのゴムに含まれる成分とニトロセルロースラッカーが反応し、変色から場合によっては塗膜そのものの損傷まで起こる可能性があるとしています。そして対策として、スタンドとの接触部分を柔らかいコットンクロスで覆うことを勧めています。
以前、Amazonのギタースタンドのレビューで、「高価なギターを掛けていたらヘッド付近の塗装にムラができた」という低評価を見たことがあります。
大切な楽器の塗装が傷んでしまったショックは理解できます。
しかし、ラッカー塗装の場合、これは必ずしも特定のスタンドだけを責めれば済む問題ではありません。
どんな塗装なのか。どんな素材と長時間接触しているのか。
そこまで含めて使用する側が理解しておく必要があります。
スタンドを信用することと、自分の楽器の塗装を理解することは別問題です。
今回の製品も、メーカー側では接触部分にシリコーンを使用するなど楽器への配慮がされています。
それでも私は、ラッカー仕上げなど接触に注意したい楽器では、さらにコットンクロスを一枚挟んでいます。
「高いスタンドを買ったから安心」ではなく、良い道具を選んだ上で、楽器の特性を理解して使う。
そこまで含めて、大切に扱うということなのだと思います。
このスタンドを買って一番変わったのは「収納」ではなかった
ここまでなら、単純なギタースタンドのレビューです。
しかし、しばらく使ってみて気づいたのは、このスタンドを購入して一番変わったのは収納方法ではなかったということです。
楽器を見る回数と、手に取る回数が変わりました。
毎日過ごす場所に、自分の気に入っているギターやベースが美しく置かれている。
すると自然に目に入ります。
そして見ているうちに、少し触りたくなる。
手を伸ばせば、そのまま演奏できます。
「今日はギターを練習しよう」と考えてからケースを開けるのではありません。
見る。
触りたくなる。
手に取る。
弾く。
この流れが、とても自然なのです。
ケースにしまうことも「大切にすること」なのだけれど
もちろん、ケースに入れて保管することには大きなメリットがあります。
埃や衝撃から守れますし、特にラッカー塗装の楽器については、Gibsonが長期保管ではケースを最も安全な場所として案内しているように、保護だけを考えれば理にかなった方法です。
しかし、演奏という観点から見ると別の側面もあります。
ケースに入っている楽器を弾くには、
ケースを出す。
開ける。
楽器を取り出す。
演奏する。
終わったら再びしまう。
という小さな手順が必要になります。
一つ一つは大した手間ではありません。
ところが毎日のことになると、この「ほんの少しの手間」が意外に効いてきます。
特に、まだ演奏すること自体が習慣になっていない人なら、「今日はまあいいか」となる理由にもなり得ます。
それに対して、目の前に楽器があれば、演奏を始めるまでの壁がほとんどありません。
ケースは楽器を物理的には守ってくれます。
しかし場合によっては、楽器との心理的な距離を少し遠くしてしまうこともあるのです。
「大切にしまう」と「大切に飾る」は違う
ここで面白いと思ったのが、「大切にする」という言葉です。
大切なギターだからケースにしまっておく。
これは当然、一つの大切にする方法です。
しかし、
大切なギターだから、毎日見えるところに美しく置いておく。
そしていつでも手に取れるようにする。
これもまた、別の「大切にする」方法なのではないでしょうか。
今回のスタンドを使い始めて、私は後者の感覚を強く感じるようになりました。
楽器本体だけにお金を使う必要はない
考えてみれば、ギターケースも同じです。
「ギターが入って持ち運べればいい」という条件だけなら、安価なケースでも目的は達成できます。
それでも大切な楽器には、頑丈なケースや、質感の良いケースを選びたくなる。
安全性だけでなく、「この楽器をこのケースに入れて持ち歩きたい」という感覚があります。
スタンドも同じなのだと思います。
単に置ければいい。
倒れなければいい。
そう考えれば、1本用のスタンドに1万円以上を出す必要はありません。
しかし毎日楽器を預け、毎日目にするものだと考えると、少し見方が変わります。
良いスタンドに置くことで、すでに持っているギターやベースが以前より美しく見える。
美しく見えるから、さらに愛着が湧く。
愛着が湧くから、手に取る。
そして演奏する。
つまり周辺機器への投資によって、楽器そのものを買い替えなくても、すでに持っている楽器との関係をアップデートすることができるのです。
まとめ――楽器は「何を買うか」だけではない
今回、少し高価なギタースタンドを買ったことで、思っていた以上にいろいろなことを考えました。
山崎実業の「ハンギングギタースタンド タワー」は、スリムで場所を取らず、重量があるため安定感もあり、何より楽器そのものを美しく見せてくれます。
一方で、トレーへの保護材追加や、楽器との接触部分へのコットンクロスなど、所有する楽器に合わせて自分なりに工夫した方が安心して使える部分もあります。
そして何より大きかったのは、
毎日見える場所に楽器を美しく置いておくことで、演奏することまで自然になったこと。
でした。
楽器は、良いものを買うだけでは終わりません。
ケース、スタンド、ケーブル、アンプ、そして置く場所。
そうした周囲の環境まで少しずつ整えていくことで、同じ楽器でも所有体験は変わっていきます。
高価なギターをもう一本買うことだけが、楽器への投資ではありません。
すでに持っている楽器を、もっと好きになるための投資。
そう考えると、周辺機器へこだわることにも、また違った意味が見えてくるように思います。