【第3回】M-VAVE FM-1、V16へアップデートすると何が変わるのか


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前回は、M-VAVE FM-1を購入して最初にやってみたいこととして、音出しからプリセット変更、アルゴリズム、アルペジエーター、そしてシーケンサーまでを実際に触ってみました。

私のところへ届いた個体は、シーケンサー画面に

Pattern / Clear / Chain / Step

と表示される仕様でした。

これはV15系のシーケンサー構成です。

V15でも6オペレーターFMシンセとして十分遊べますし、16ステップのシーケンサーやPattern、Chainを使ってフレーズを組み立てることもできます。

ただし、V15は基本的にシングルティンバー。

つまり複数の音色を別パートとして同時に扱う、いわゆるマルチティンバー音源ではありません。

ところが2026年10月21日、M-VAVEから純正ファームウェア V16 が公開されました。

このV16、単なるバグフィックスや細かな機能追加ではありません。

公式リリースノートではV15を「single-timbral, 12-note polyphony」としたうえで、V16では8つのVoiceを持つマルチティンバー音源、合計20音ポリフォニーへ拡張されたことが発表されています。

実際に内容を見ていくと、

FM-1という楽器の使い方そのものが変わるアップデート

と言っても良さそうです。

今回はまずV15からV16へアップデートし、何が変わったのかを確認してみます。


V16へのアップデートはそれほど難しくない

ファームウェアの書き換えというと、

「失敗したら動かなくなるのでは?」

「特殊な操作が必要なのでは?」

と少し身構えてしまいます。

しかし純正V16への更新については、M-VAVE自身がMac/Windows用のアップデートソフト M-UPGRADEを用意しています。

公式ダウンロードページには現在、

  • M-UPGRADE(Windows / macOS)
  • FM-1 Firmware V16
  • MIDI CONTROL資料
  • Release Note

が公開されています。

つまり基本的には、

M-UPGRADEを入れる → V16をダウンロードする → FM-1をUSB接続 → 書き込む

という流れです。

カスタムファームウェアのような特殊なツールを用意する必要はありません。

Dwonload→→→→


M-UPGRADEをダウンロードする

まずM-VAVE公式Downloadページから、自分の環境に合ったM-UPGRADEを入手します。

Windows版とMac版の両方が用意されています。

M-UPGRADEはFM-1専用ではなく、M-VAVE製品のファームウェア更新に使われる公式ソフトです。

M-UPGRADEのダウンロード部分
スクリーンショット 2026-11-01 16.40.38.

Dwonload→→→→


FM-1 V16のファームウェアを入手する

同じページの「PC Firmware」からFM-1を探します。

執筆時点の最新版は、

FM-1 Version V16 / 2026年10月21日

です。

ファームウェアファイルをダウンロードしておきます。

M-VAVE公式ダウンロードページのFM-1 V16部分
スクリーンショット 2026-11-01 16.29.38.

Dwonload→→→→


MacでM-UPGRADEが開けない場合

スクリーンショット 2026-11-01 17.04.14.

Macでは、M-UPGRADEの初回起動時に「Appleでは安全性を確認できませんでした」と表示され、起動をブロックされる場合があります。

その場合は、

システム設定 → プライバシーとセキュリティ →「このまま開く」

スクリーンショット 2026-11-01 17.08.15.

を選び、Touch IDまたはパスワードで許可します。

Gatekeeper全体を無効にする必要はありません。M-VAVE公式サイトから入手したM-UPGRADEであることを確認したうえで、このアプリだけ個別に許可すればOKです。


FM-1をUSBでMac/PCへ接続

FM-1とコンピューターをUSBケーブルで接続します。

ここでは充電専用ケーブルではなく、データ通信のできるUSBケーブルを使います。

またファームウェアを書き込んでいる途中では、USBケーブルを抜いたり、FM-1やコンピューターの電源を切ったりしないようにします。


M-UPGRADEからV16を書き込む

M-UPGRADEを起動し、ダウンロードしたFM-1 V16のファームウェアファイルを指定して更新を実行します。

細かなボタン表記については使用するM-UPGRADEのバージョンによって画面が変わる可能性があるため、ここでは実際の画面を掲載しておきます。

M-UPGRADEでFM-1を認識、V16ファームウェアを指定した状態
スクリーンショット 2026-11-01 17.18.06@0.5x.

Upsate Firmwareをクリックして「Completed Update」の表示が出たら完了です

なお公式では、もし

「Failed to enter upgrade mode!」

と表示された場合、M-UPGRADEを開いたままUSBケーブルを一度抜き差しし、そのまま更新を続けるよう案内されています。

こうした対処方法まで公式ページに書かれているので、更新そのものはそれほど難しい作業ではありません。


V16ではファームウェアのバージョン確認も分かりやすくなった

V15では、本体を普通に起動しても起動画面にファームウェア番号が表示されないため、

「今、自分のFM-1に何が入っているのか」

が少し分かりにくい部分がありました。

V16ではこの点も改善され、GLOBEの最終ページにファームウェアのバージョン番号が表示されるようになっています。

アップデート後は、ここでV16になっていることを確認できます。

V16の確認方法
本体の GLO ボタンを押してGLOBE画面を開き、`SELECT` で最後のData Managementページまで進むと、現在のファームウェアバージョンを確認できます。


では、V16で何が変わったのか?

ここからが本題です。

V15とV16の代表的な違いを整理すると、かなり大きなアップデートであることが分かります。

項目 V15 V16
ティンバー 1パート 8 Voice
ポリフォニー 12音 合計20音
シーケンサー 最大16ステップ 最大64ステップ
曲構成 Pattern + Chain 8トラック×8列 Arrangement
音色 基本1音色 Voiceごとに別プリセット
MIDI 単一音源中心 Voiceごとに受信CH設定
Level / Pan ― Voiceごとに設定可能
Fine Tune ― Voiceごとに±100cent

V16では1つのPatternが16ステップから最大64ステップへ拡張され、従来のPatternを順番につなぐChain方式は、8トラック×8列のArrangement方式へ変更されました。

ここは単に「機能が増えた」というより、FM-1の性格そのものが変わった部分です。


最大の変化は「8 Voice」

個人的にV16でもっとも重要だと思うのが、

1パートから8 Voiceへ

という変更です。

ここでいうVoiceは、単純な「発音数」という意味ではありません。

公式では、

Voice = timbral part

と定義されています。

つまり、

Voice 1にはBass。

Voice 2にはElectric Piano。

Voice 3にはPad。

Voice 4にはBell。

Voice 5にはLead。

といったように、別々の音色を同時に使うことができるようになったわけです。

これはV15にはなかった考え方です。


20音ポリ。ただし「20音×8」ではない

もう一つ注意したいのがポリフォニーです。

V15では12音でしたが、V16では20音ポリフォニーへ拡張されました。

ただし、

8 Voiceそれぞれが20音鳴るわけではありません。

8パート全体で20音を共有します。

公式でも、

「20 voices in total, not 20 per part」

と明記されています。

例えばPadで大きなコードを鳴らしながら、EP、Bass、Leadを同時に使えば、その合計で20音を使っていくことになります。

約1万円クラスの小型ハードウェアということを考えると、かなり面白い仕様です。


VoiceごとにMIDIチャンネルを設定できる

そして、ここがV16において重要な部分です。

V16では各Voiceに、

  • Preset
  • On / Off
  • MIDI Receive Channel
  • Level
  • Pan
  • Pitch Bend Range
  • Glide
  • Fine Tune

などを個別に設定できます。

特に重要なのが、

MIDI Receive Channel

です。

つまり、

Voice 1 = MIDI Ch.1
Voice 2 = MIDI Ch.2
Voice 3 = MIDI Ch.3
……

のように設定できる。

ということは、

DAWから複数のMIDIトラックをFM-1へ送り、それぞれ別の音色を演奏させる

ことができます。

ここまで来るとFM-1は、単なる小型FMシンセではありません。

昔ながらの言い方をすれば、

8パート・マルチティンバーの外部音源モジュール

として使えるようになります。


シーケンサーも16ステップから最大64ステップへ

V15では16ステップだったPatternが、V16では最大64ステップまで拡張されました。

Pattern自体は16個ですが、一つのPatternで扱える長さが大きく増えています。

さらにV15にあった「Chain」は廃止され、

8トラック×8列のArrangement

へ変更されました。

各行がVoiceに対応し、それぞれのセルへPatternを割り当てる仕組みです。

複数の行を同時再生できるので、

BassのPattern。

EPのPattern。

PadのPattern。

LeadのPattern。

といったものを重ねながら曲を組み立てることができます。

V15のシーケンサーが、

「一つのFM音色でフレーズを作る」

という感覚だったとすれば、

V16では、

「複数パートを組み合わせてアレンジする」

ところまで踏み込んできたわけです。


 Ratchetなどシーケンサー機能も強化

細かなところでは、ステップごとに

×1
×2
×3
×4

のRatchetを設定できるようになりました。

1ステップ内で音を複数回トリガーできるので、電子音楽的な細かな連打なども作りやすくなっています。

また再生開始位置の指定やPattern切り替え、画面表示など、シーケンサー周辺にもかなり手が入っています。

今回は「V15から何が変わったか」に絞っていますので、この辺りの細かな操作については実際に使いながら改めて紹介していきたいと思います。


FX周辺もかなり変わっている

V16ではエフェクト周辺も再設計されています。

128のFX Groupが独立したライブラリとして管理され、各Voiceの音色プリセットとは切り離されました。

つまり音色を変更しても、それだけで共有FXが勝手に変わらない構造になっています。

さらに外部MIDIからのFX制御についてもCC70〜93が割り当てられるなど、外部機器やDAWとの連携を意識した仕様へ変化しています。

これもV16が単なる「本体だけで遊ぶ小型シンセ」から、一歩外へ広がったことを感じさせる部分です。


V15からV16で、FM-1は何になったのか?

V15を使っていたとき、FM-1に対する私の印象は、

「約1万円で買える、意外と本格的な6オペレーターFMシンセ」

でした。

シーケンサーもあり、アルペジエーターもあり、十分に面白い。

しかし基本的には、一つのFM音色を作って演奏するシンセです。

V16ではそこから、

8パート・マルチティンバー

20音ポリフォニー

最大64ステップ

8トラックArrangement

VoiceごとのMIDIチャンネル

という構造になりました。

つまり、

「小型FMシンセ」から「小型FM制作システム」へ

近づいたように感じます。

同じハードウェアです。

追加のDSPを取り付けたわけでもありません。

ファームウェアを書き換えただけです。

それなのに、楽器としてできることがここまで変わる。

FM-1という機材の面白さが、少しずつ見えてきました。


では、実際にDAWから鳴らしたらどうなる?

ここまで読んで、

「8 Voiceになったのは分かった」

「別々のMIDIチャンネルを設定できるのも分かった」

となると、次に試してみたくなることがあります。

DAWから複数のVoiceを同時に鳴らしてみる。

例えば、

BassをVoice 1。

Electric PianoをVoice 2。

PadをVoice 3。

BellをVoice 4。

LeadをVoice 5。

それぞれ別のMIDIトラックからFM-1へ送って、一つの曲として鳴らす。

同じ小さなFM-1ですが、

一つの音色を鳴らすシンセ

から、

複数パートを受け持つ外部音源

として使えるようになりました。

では、

DAW側ではどのようにMIDIトラックを設定するのか。

FM-1側ではVoiceごとのMIDIチャンネルをどう設定するのか。

実際の制作ではどのくらい使えるのか。

次回はここを詳しく試してみます。次回は、

第4回:V16をDAWから鳴らす——8パート・マルチティンバー音源として使う

約1万円のFM-1を、DAWの外部音源として本格的に使ってみます。


M-VAVE FM-1 解説 【1〜13】

M-VAVE FM-1について、基本操作から音作り、カスタムファームウェアまで順番に紹介していきます。

  • 第1回:FM-1とは何か
  • 第2回:V15で最初の一歩——音出しからシーケンサーまで
  • 第3回:V16へアップデートすると何が変わるのか
  • 第4回:V16をDAWから鳴らす——8パート・マルチティンバー音源として使う
  • 第5回:音作り編——6オペレーターFMを怖がらず触る
  • 第6回:Felucca導入——FM-1が別の楽器に変わる
  • 第7回:純正FM-1とFeluccaは何が違うのか
  • 第8回:Firmware Hubとは何か——100種類超のFWを見てみる
  • 第9回:FM-SWITCH——iPhone・iPad・Macからファームウェアを着せ替える
  • 第10回:FM-1用ファームウェアをVST3 / AU / CLAPとしてDAWで動かす
  • 第11回:気になるファームウェアを実際に試してみる
  • 第12回:FM-1は1台で十分? 複数台運用との違いを考える
  • 第13回:FM-1はシンセなのか、プラットフォームなのか
  • ※公開済みの記事から順次リンクを追加していきます。

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