Overlap――誰かと重なるほど、心は空っぽになっていく

  • 2026年8月28日
  • 2026年8月28日
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「誰かとつながっていたい」

そう思うことは、決して特別なことではありません。

スマートフォンを手に取れば、いつでも誰かと出会うことができる。プロフィールを眺め、気になった相手をスワイプし、メッセージを交わす。

以前なら時間をかけて築いていた関係も、今では驚くほど簡単に始めることができます。

けれど、誰かとつながることが、そのまま孤独を埋めることになるとは限りません。

むしろ、寂しさを埋めるために誰かを求め続けることで、自分の中にある空白が、よりはっきりと見えてくることもある。

今回の楽曲 「Overlap」 は、そんな現代の女性の姿を描いた作品です。

「あなた」ではなく「あなたの代わり」を探している

曲の冒頭では、スマートフォンの画面をスワイプしながら、主人公が誰かを探しています。

誰も知らない どうか気づいて
画面スワイプ 仮面めくって
どこか似ている 声をなぞって
名前呼べずに まだ立ち止まって

ここで彼女が本当に探しているのは、目の前に現れた「彼」ではないのかもしれません。

「どこか似ている」誰か。

その声、その姿、その雰囲気の向こう側に、別の誰かを重ねようとしている。

だから、この曲に登場する男性は、あくまでも彼女の視点の中に存在するものです。

彼自身を描くことが目的ではありません。

彼女が見ている「彼」の姿に、彼女自身が求めている別の誰かが重なっている。

そこに、この曲のタイトルでもある 「Overlap」 という言葉があります。


欲望と罪、そして仮面

歌詞の中には、柘榴、髑髏、軀、林檎といった象徴的なモチーフが登場します。

欲望に塗れた柘榴
聖女のフリした髑髏
心に沈んだ軀
囓った林檎 穢れた煩悩
歪んだ本能 澱んだ残像

柘榴は欲望。

林檎は禁忌。

髑髏は、その欲望の先にあるもの。

そして「仮面」は、自分自身を隠すためのものでもあり、同時に別の自分を演じるためのものでもあります。

誰かに好かれるための自分。

寂しさを隠すための自分。

本当の自分とは違う姿を演じているうちに、どちらが本当の自分なのか分からなくなっていく。

「Overlap」では、そうした心の揺らぎを、直接的に説明するのではなく、いくつもの象徴を重ね合わせながら描いています。


「Overlap」は、重なることで生まれる孤独

サビでは、曲のタイトルが繰り返されます。

今宵彼と私はひとつに重なり合おう
it’s overlap overlap wu ah
彼の姿にあなたが重なり
overlap overlap you are

ここでは、「彼」と「あなた」が重なります。

しかし、それによって問題が解決するわけではありません。

むしろ、誰かと重なれば重なるほど、そこにいるのは目の前の相手ではなくなっていく。

一時的に孤独を忘れるために誰かとつながる。

けれど、その相手の中に別の誰かを探してしまう。

そして最後には、自分自身さえも曖昧になっていく。

「誰かとつながること」と「誰かを求めること」は、本当に同じなのだろうか。

「Overlap」は、そんな問いを残す楽曲でもあります。


サビに刻まれる、ひいのさんのカスタネット

「Overlap」では、サビのカスタネット演奏に特別ゲストとしてカスタネット奏者・ひいのさんをお迎えしました。

細かなカスタネットのビートは、単なるパーカッションとしてではなく、主人公の心の内側にある緊張感や罪の意識を刻み込むように響いています。

太いベースとドラムが作るグルーヴの上で、カスタネットが細かな粒を刻み続ける。その大きなリズムと小さなリズムが重なり合うことで、「Overlap」というタイトルにも通じる、独特の緊張感が生まれています。

また、欲望や罪を描く歌詞には湿度のあるイメージが多く登場しますが、カスタネットの乾いた音はその世界に鋭い輪郭を与えています。

「overlap」という言葉が繰り返されるたびに刻まれるその音は、彼女の中で重なっていく記憶や欲望、そして消すことのできない感情の残響なのかもしれません。


 「重なり」を音そのものでも表現する

そして、音源全体を聴いていてもう一つ感じるのが、リズムのレイヤーがかなり重要な役割を果たしていることです。

低域にはベースとドラムによる安定したグルーヴがあり、その上にボーカルが乗る。

さらにギターなどの音色が加わり、サビではカスタネットが細かなリズムを刻む。

つまり、一つのリズムではなく、異なる大きさ・細かさのリズムが同時に存在している

これは偶然というより、「Overlap」というタイトルそのものと非常に相性がいい構造です。

一つひとつの音は別々に動いているのに、重なった瞬間に一つの音楽になる。

一方で、その重なりが増えるほど、どこに自分の輪郭があるのか分からなくなっていく。

歌詞で描いている、

彼の姿にあなたが重なり

という世界を、アレンジそのものでも表現しているように感じます。


 そして「乾いた音」が面白い

個人的には、ひいのさんのカスタネットについて、もう一つ面白いと思うところがあります。

この曲には「柘榴」「林檎」「罪」「欲望」といった、かなり湿度の高いイメージがあります。

ところが、そこに入ってくるカスタネットの音は非常に乾いている

この「湿った世界」と「乾いたビート」の対比が、曲に独特の緊張感を作っています。

血のような赤ではなく、今回PVのビジュアルで考えているとも非常に相性がいいと思います。

紫の怪しげな世界の中で、カスタネットだけが「カッ、カッ、カッ」と現実的な輪郭を持って刻まれる。


日本語のリズムから生まれた17/16拍子

音楽的にも、この曲には一つの仕掛けがあります。

冒頭には 17/16拍子 という、一見するとかなり特殊な変拍子を取り入れています。

ただし、これは「変拍子を使った曲を作ろう」と考えて導入したものではありません。

きっかけになったのは、日本語そのものが持っているリズムでした。

日本語には、五・七・五や五・七・五・七・七といった奇数のまとまりを持つ言葉の文化があります。

民謡にも独特の拍節感があり、必ずしも西洋音楽的な均等な拍子だけでは捉えきれない、日本語ならではのリズムがあります。

「Overlap」の冒頭も、歌詞の言葉の配置と自然な流れを優先していった結果、17/16という拍子にたどり着きました。

だから、ここで17/16を強く主張したいわけではありません。

むしろ、聴いている人が「変拍子だ」と意識しなくてもいい。

普通に聴いているのに、どこか身体の感覚が引っかかる。

そんな「隠し味」として、この変拍子を仕込んでいます。


夢ノ結唱 AVERと描く女性の視点

ボーカルには 夢ノ結唱 AVER を起用しました。

この曲では、合成音声であることそのものを前面に出すのではなく、ひとりの女性の内側にある世界を表現するための「声」として扱っています。

「Overlap」で描きたかったのは、男性と女性の恋愛そのものではありません。

あくまで、

彼女が見ている世界。

彼女が求めているもの。

彼女の記憶。

彼女の欲望。

そして、彼女自身が作り出した「誰か」の姿。

男性の存在すら、彼女の意識の中に浮かぶ影のようなものとして捉えています。

だからこの曲には、恋愛ドラマのような明確な男女の関係性はありません。

あるのは、ひとりの女性の狭い視野の中で、現実と記憶と妄想が少しずつ重なっていく感覚です。


キャッチーなのに、どこか怪しい

「Overlap」は、歌詞だけを読むとかなりダークな作品です。

けれど、サウンドそのものは重苦しいものではありません。

キャッチーなメロディーと躍動感のあるリズムがあり、サビの

「overlap overlap」

というフレーズは、繰り返すほど耳に残っていきます。

その一方で、歌詞には「欲望」「仮面」「髑髏」「罪」「偽り」といった言葉が並ぶ。

このポップさとダークさのギャップも、この曲の大きな特徴です。

明るく楽しいわけではない。

けれど、重く沈み込むわけでもない。

踊れるようなリズムの中で、少しずつ何かがおかしくなっていく。

その感覚を大切にしました。


最後に残る「so we were」

最後のサビでは、

罪と偽りがすべて溶けてく
overlap overlap overlap overlap so we were

と歌います。

最初は 「so we are」 だった言葉が、最後には 「so we were」 になる。

「私たちはそうだった」。

現在形から過去形へ。

重なっていたはずのものが、最後には過去のものになっている。

そこに何が残ったのかは、あえて明確にはしていません。

もしかすると、彼女は誰かを見つけたのかもしれない。

あるいは、最初から誰も見つけていなかったのかもしれない。

残るのは、重なり合った記憶と、消えきらない残像だけ。

「Overlap」には、そんな曖昧さを残しています。

誰かと重なることで、孤独から逃れようとする。

けれど、重なったものが増えるほど、自分の輪郭が分からなくなっていく。

現代の「つながり」の中にある、そんな奇妙な孤独を描いた一曲です。


「Overlap」

Music & Lyrics:m.Freaks
Vocal:夢ノ結唱 AVER
castanet:ひいの(特別ゲスト)

other Instruments : m.Freaks (Piano,Guitars,Bass,Synth)

『Overlap』は、8曲入りオリジナルアルバム 『Overlap』 に収録されています。

音と言葉は命を宿す。

m.Freaksが描くのは、誰かと誰かが重なった、その境界に生まれる音の風景です。

金曜日リリース


作品を隔週金曜日にリリースします。
カバー曲やオリジナル曲を毎回リリース!ある程度まとまるアルバムとして再リリースします。また先行してYouTubeチャンネルでプロモーション動画も公開しています

今後とも応援よろしくお願いいたします!

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付録ー調声に最適なヘッドフォン!


付録として、エムフリお気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!

今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。


僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。

その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。

ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。

購入までの経緯

最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。

当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするのですが、聞き疲れしないので気に入っていました。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。

気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。

Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。

調声に最適

結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!

丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。

同じデザインで、ST-90-05ST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。

低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。

最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。

とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!


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