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Teenage EngineeringのCM-15を、私は普段の録音でかなり頻繁に使用しています。
コンパクトで取り回しがよく、それでいて音質は非常に優秀。
特にクラシックギターやアコーディナとの相性がよく、現在では私の録音環境におけるメインマイクのひとつになっています。
だからこそ、今回発生した不具合については少し気になっています。
結論から書くと、
CM-15のゲイン切り替えで、特定の位置だけ完全に音を拾わなくなる症状が再発しました。
しかも今回の個体は、以前まったく同じ症状で新品交換してもらった交換品です。
さらに興味深いことに、症状が発生した翌日に再確認すると、何もしていないにもかかわらず正常に戻っていました。
今回は、現時点までの経緯を記録としてまとめておきます。
今後、国内代理店やメーカーから回答が得られれば、その内容についても追記していく予定です。
最初の不具合は2026年3月頃
最初に症状が出たのは2026年3月頃でした。
CM-15には本体側でゲインを切り替えるスライドスイッチがありますが、あるゲイン位置へ切り替えると、突然まったく音を拾わなくなりました。
ゲインが小さくなる、ノイズが増える、といった程度ではありません。
その位置だけ実質的に無音になる
という症状です。
購入してそれほど時間が経っていなかったため、販売店へ相談。
初期不良として新品交換していただくことになりました。
交換されたCM-15は問題なく動作していたため、この時点では単純な個体不良だったのだろうと考えていました。
数ヶ月後、交換品でも同じ症状が発生
ところが、それから数ヶ月通常使用していたところ、交換してもらったCM-15でも同じ症状が発生しました。
ゲイン切り替えスイッチを特定の位置へ動かすと、完全に音が消えます。
最初の個体と非常によく似た症状です。
今回は原因を少しでも切り分けるために、接続方法も変更して確認しました。
普段使用しているmini XLRだけではなく、USB-Cでもテスト。
しかし、どちらの接続方法でも同じゲイン位置で音が出なくなりました。
そのため、少なくとも単純なmini XLR端子やケーブルだけの問題ではなさそうです。
一度新品交換となった製品で、数ヶ月後にまったく同じ症状が発生した。
ここで初めて、
「これは本当に偶然の個体不良なのだろうか?」
という疑問を持つようになりました。
海外でも似た症状が報告されている
そこで調べてみると、海外のCM-15ユーザーからも似た報告がいくつか見つかりました。
特定のGain設定だけ音が出ないケースや、交換した別個体でもゲイン関連の問題が発生したというユーザー報告があります。2026年にも新品を複数台交換して同様のゲイン問題を経験したという投稿が確認できます。もちろん、フォーラムへの投稿だけで製品全体の不具合率を判断することはできませんが、少なくとも私だけに発生している極めて特殊な現象というわけではなさそうです。
さらに興味深いのは、
「しばらく時間を置くと再び使えるようになった」
という報告があることです。
2024年には、最高ゲインが動作しないものの、電源を入れて10〜15分程度経過すると動作するという報告があります。2025年にも、Gain 2が起動直後には使えず、15分程度経過すると使えるようになるという類似例があります。
そして2026年には、高湿度環境で使用していたユーザーがゲイン関連の不具合を経験し、数日後に再び動作するようになったという投稿もありました。
ただし、これはあくまでユーザー自身の経験と推測です。
「CM-15のゲイン不良は湿気が原因である」とメーカーが公式に認定しているわけではありません。
ここは切り分けて考える必要があります。
ところが翌日、何もしていないのに直っていた
そして今回、さらに不思議なことが起きました。
不具合を確認した翌日、もう一度CM-15をチェックしてみたところ、
正常に戻っていました。
設定変更をしたわけでもありません。
ファームウェアを更新したわけでも、分解したわけでもありません。
前日は特定のゲイン位置で完全に無音になっていたものが、時間を置いただけで普通に使えるようになっていました。
これは単純なスイッチの完全断線とは少し違う挙動にも思えます。
そして先ほど紹介した海外での「しばらく置くと復旧した」という報告とも重なります。
そこで、CM-15そのものの設計について改めて調べてみました。
メーカー自身が説明している「500MΩ」という特殊な回路
Teenage Engineeringは、CM-15の開発について公式サイトでかなり興味深い説明をしています。
CM-15は1インチの大型ダイアフラム・コンデンサーカプセルを、この非常に小さな筐体に搭載しています。
そのカプセルへ安定した80Vの偏極電圧を供給するために、
最大500MΩという非常に大きな抵抗値
を扱っているそうです。
しかも、その回路を55×20mmという非常に高密度なPCB上へ収めています。
開発者自身、このような巨大な抵抗値を扱う回路では、
湿気、埃、残留物などを考慮する必要があり、周囲との近接によってシステムが大きく影響を受ける可能性がある
と説明しています。
これは今回の症状を考えるうえで非常に興味深い情報です。
では、湿気が原因なのか?
ここについては、現時点では分かりません。
500MΩ級の高インピーダンス回路では、一般的な低インピーダンス回路なら無視できるような微小な漏れ電流でも、回路動作に影響を与える可能性があります。
そのため、
湿度
↓
基板表面などで微小なリークが発生
↓
高インピーダンス回路へ影響
↓
時間経過や乾燥によって正常化
という可能性を考えること自体には技術的な理由があります。
しかし、それが今回のCM-15で実際に起きたことなのかは別問題です。
ゲイン切り替えスイッチやその周辺回路、電源回路、80Vの偏極電圧を生成する回路、その他の部品など、別の原因も考えられます。
ですから私は、
「CM-15は湿気で壊れる」
と結論づけるつもりはありません。
むしろ、
メーカー自身が高インピーダンス回路における湿気等へのセンシティビティを説明している以上、今回の症状との関連性を技術側に確認してみたい
というのが現在の考えです。
「直ったから問題なし」にはしたくない
今回、一番重要だと考えているのはここです。
現在CM-15は正常に動作しています。
それだけを見れば、
「直ったのだから、そのまま使えばいい」
という考え方もできます。
しかし今回は、
1台目で特定Gainが無音
↓
新品交換
↓
交換品は当初正常
↓
数ヶ月使用
↓
同じ症状が再発
↓
翌日自然復旧
という経緯があります。
これを単純に「現在動いているから正常」と判断してしまうのは少し怖いところです。
特に問題なのは、保証期間終了後にもう一度同じ症状が出た場合です。
CM-15は決して安価なマイクではありません。
そして私の場合、単なる所有物ではなく実際の音楽制作で頻繁に使用するメインツールです。
音質そのものには非常に満足しています。
だからこそ、安心して長く使える状態なのかを保証期間内に一度きちんと確認しておきたいと思っています。
販売店を通じてMI、そしてメーカーの見解を確認する
現在、購入した販売店には今回の経緯を伝えています。
そこでお願いしているのは、単純な新品交換だけではありません。
国内代理店であるMIの技術担当へ、
・同様の症状を把握しているか
・特定Gainで無音となり、時間経過で復旧する事例について情報があるか
・500MΩ級の高インピーダンス回路と今回の症状に関連性が考えられるか
・発売後に基板、ゲイン回路、スイッチ、使用部品などの変更や対策が行われているか
・現在の個体について保証期間内にどのような点検が可能か
といった点を確認していただきたいとお願いしました。
可能であれば、Teenage Engineering側の見解についても知りたいところです。
今後は防湿庫で管理する予定
原因が確定したわけではありませんが、今後CM-15については使用していないとき、基本的に防湿庫へ戻す運用にしようと考えています。
これは「今回の原因が湿気だった」と判断したからではありません。
メーカー自身が500MΩ級の高インピーダンス回路について、湿気や埃、残留物などへの配慮が必要であると説明している以上、予防的な管理として合理的だと判断したためです。
LCT940やLCT240 PROなど、ほかのコンデンサーマイクも基本的には同様に防湿庫で管理していくつもりです。
それでもCM-15を使いたい
ここまで不具合について書いてきましたが、一つ明確にしておきたいことがあります。
私はCM-15というマイクそのものを気に入っています。
特にアコーディナやクラシックギターを録ったときの音は非常に良く、コンパクトな本体からは想像しにくいほど自然で情報量の多い音が録れます。
今回も修理や点検へ送る前に、現在制作している「テルーの唄」で使用するクラシックギターとアコーディナだけはCM-15で収録しておく予定です。
つまり、
不具合があるから手放したいのではなく、気に入っているからこそ安心して使える状態にしたい。
これが今回問い合わせをしている一番の理由です。
今後の対応についても追記します
現時点では、CM-15は再び正常に動作しています。
このあと現在進行中の録音を終えたうえで、保証期間内の点検をお願いする予定です。
MI、あるいはTeenage Engineeringから、
「原因は何だったのか」
「同様の事例を把握しているのか」
「対策された部品や製造変更があるのか」
といった回答が得られれば、この記事にも追記します。
CM-15は非常に個性的で、性能的にも魅力のあるマイクです。
その一方で、今回私が経験したような症状がほかのユーザーにも起きているのであれば、情報を共有しておくことには意味があると思います。
特に今回のような、
「故障したように見えたのに、時間を置いたら直っていた」
という現象は、症状が消えてしまうだけに記録に残りにくいものです。
だからこそ、一連の経緯をここに残しておきます。
今後進展があれば、引き続き更新していきます。
