高級ケーブルは本当に意味がないのか?──新品ギターのノイズを追いかけて分かったこと


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新品ギターから聞こえた「ブーン」というノイズ

先日購入したFenderのCabronita Telecasterを弾いていて、少し気になることがありました。

アンプにつないだ状態で、ギターから「ブーン」というノイズが聞こえるのです。

搭載されているピックアップはTV Jones。ハムノイズには比較的強い構造という認識があったため、最初は少し意外でした。

しかも症状を確認していくと、少し不思議な特徴がありました。

ギター側のボリュームを10、つまりMAXにするとほぼ静かになります。

ところが8程度まで少し絞ると、ブーンというノイズが目立つようになる。

さらにボリュームを絞っていくと、今度はノイズも一緒に小さくなっていきます。

また、弦やボリュームノブ、ピックアップセレクターなど金属部分に触れると、ノイズはほぼ気にならなくなります。

新品で購入したばかりのギターです。

「もしかすると電装系に何か問題があるのではないか」

最初はそんなことも考えました。

ただ、ここでいきなり故障と決めつけるのではなく、一つずつ原因を切り分けてみることにしました。

ピックアップポジションによってノイズ量が違う

まずピックアップセレクターを切り替えて確認してみました。

ブリッジ側ではノイズが比較的大きく、ネック側ではそれより少し小さい。

そしてセンターポジションでは、かなり静かになります。

2つのピックアップを同時に使用したことでノイズ成分が相殺されている可能性も考えられます。

そのため、この時点ではセンターポジションで静かになることよりも、

ボリュームをMAXから少し下げたときにノイズが目立つ

という現象の方が気になりました。

なぜVolume10では静かで、8付近からノイズ?

今回、特に不思議に感じたのがこの現象でした。

ギター側のVolumeを10、つまりMAXにするとノイズはほとんど聞こえません。

ところが8程度まで少し下げると、「ブーン」というノイズが目立つようになります。

直感的には、

「ボリュームを下げるなら、ノイズも一緒に小さくなるのでは?」

と思ってしまいます。

しかし、パッシブギターのVolume回路では必ずしもそう単純ではありません。

VolumeをMAXにした状態では、ピックアップから出力ジャックまでが比較的低いインピーダンスの状態になります。

一方、ボリュームを途中まで絞ると、Volumeポットの抵抗成分が信号経路に入り、出力側のインピーダンスが高くなる領域ができます。

高インピーダンスになると、周囲から飛び込んでくる電界ノイズなどの影響を受けやすくなります。

そのため、

Volume 10では静か。

少し絞った8付近では外来ノイズが目立つ。

さらに0へ近づけていくと、音声信号そのものと一緒にノイズも小さくなる。

という挙動が起こることがあります。

つまり今回の症状は、

「Volumeを絞ったからノイズが発生した」

というより、

Volumeを絞ったことで回路の条件が変わり、それまで目立たなかった環境ノイズが表面化した

と考える方が自然です。

このことは、後ほどケーブルを交換したときの結果ともつながってきます。

アンプを変えても同じだった

次にアンプ側を疑いました。

普段使用しているFender Blues Junior 30thだけでなく、同じ部屋にある別のアンプでも確認してみました。

しかし、症状はほぼ同じです。

これで少なくとも、

「Blues Junior固有のノイズ」

という可能性はかなり低くなりました。

他の楽器でも比較してみる

そこで今度は、同じ環境で別の楽器を接続してみました。

手元にあったのは、

Fender Custom Shop Jaco Pastorius Tribute Fretless Jazz Bassと、American Professional II Precision Bassです。

Jaco Pastorius Fretlessでは、Cabronitaで聞こえていたものと近い「ブーン」というノイズが確認できました。

一方、Precision Bassは非常に静かです。

どのボリューム位置でも、CabronitaをVolume 10にした状態と同じくらい、ほとんどノイズを感じません。

これはかなり興味深い結果でした。

Jazz Bass系のシングルコイルは外来ノイズを拾いやすく、Precision Bassのスプリットコイルは構造上ハムノイズをキャンセルしやすい。

つまり、少なくともこの部屋には、

楽器側の構造によって拾ったり拾わなかったりする外来ノイズが存在している

可能性が見えてきました。

ギターの向きを変えるとノイズ量まで変わった

さらにCabronitaを持ったまま身体の向きを変えてみました。

すると、ギターの角度によってブーンというノイズの量が変化します。

この時点で、ギター内部の故障だけでは説明しにくくなってきました。

電源や周辺機器、照明、ACアダプター、PC周辺機器などから発生する電磁界を、ギターやケーブルが拾っている可能性があります。

考えてみれば、現在Grecoのギターは別の場所に置いてありますが、以前この部屋で使用していたときには多少ノイズを感じることがありました。

ところが現在置いてある実家では、ほとんどノイズが気になりません。

こうなると、ギターそのものだけではなく、

「どこで使うか」

という環境の影響を無視できません。

そしてケーブルを変えたら状況が大きく変わった

ここで、さらに別の比較をしてみました。

普段使っているMonster Cableでは、これまでと同じように、CabronitaのVolumeを少し下げると「ブーン」というノイズが目立ちます。

ところが別のMonster Cable、Studio PRO 2000へ交換したところ、ノイズの出方が大きく変わりました。

完全に無音になるわけではありません。

Volume 10ではほぼ無音。

Volumeを8程度まで下げると、わずかにノイズを感じます。

ただし、通常のケーブルで感じていた「ブーン」というノイズと比べると、その量はかなり小さくなりました。

つまりStudio PRO 2000によって症状そのものが完全に消えたというより、

同じ環境ノイズに対して、ケーブルを交換することで影響が大幅に緩和された

という表現の方が正確です。

この違いは、今回の検証ではかなり明確に感じることができました。

ケーブルの長さでもノイズ量が変わった

もう一つ興味深かったのが、ケーブルの長さによる違いです。

同じMOGAMIでも、3mのケーブルより1.5mのケーブルを使用した方が、今回の環境ではノイズが少なく感じられました。

もちろん、これだけで「短いケーブルなら必ずノイズが減る」と一般化することはできません。

ただ、同じ種類のケーブルで長さだけを変えたときにも差が出たことから、今回のノイズについては、ケーブルの種類だけではなく、ケーブル長も一つの要素として影響している可能性があります。

特にパッシブ回路では、ケーブルも含めて一つの回路として考える必要があります。

レコーディングで必要以上に長いケーブルを使わないというのは、非常に単純ですが、有効なノイズ対策の一つなのかもしれません。

今回は比較動画を掲載しなかった

実は今回のノイズ差については、動画での比較も試みました。

しかし、最終的には掲載を見送りました。

ノイズのような小さな音は、アンプとマイクの距離、録音レベル、撮影機器側の自動ゲインやノイズ処理などによって、実際とは異なる印象になる可能性があります。

撮影方法によって差を大きく見せることも、逆に小さく見せることもできてしまいます。

そのため今回は、動画上の「聞こえ方」を証拠にするのではなく、アンプ、楽器、使用する場所、ケーブルの種類、ケーブル長など、条件を一つずつ変えて確認した結果そのものを重視することにしました。

ここまでの検証から見えてきたこと

ここまでの検証結果を整理すると、今回の現象は次のように考えることができます。

Volume 10では静かなのに、8付近でノイズが増える。

一見すると故障を疑いたくなる現象ですが、パッシブのVolume回路では、途中位置で出力インピーダンスが高くなり、外来ノイズの影響が表面化することがあります。

今回、別室でも同じ傾向が再現しました。

ただし、ノイズの絶対量は場所によって異なり、リビングでは同じ挙動が確認できても、それほど気になる大きさではありませんでした。

さらに、Studio PRO 2000ではノイズが大幅に緩和され、同じMOGAMIでも3mより1.5mの方がノイズが少なく感じられました。

つまり今回見えてきたのは、単純な「ギターの故障」や「部屋の問題」という一つの原因ではなく、

パッシブ回路の状態、周囲の環境ノイズ、ケーブルのノイズ耐性、そしてケーブル長が組み合わさって、最終的なノイズ量が決まっている

ということでした。

「高級ケーブルは意味がない」とは言い切れない

ケーブルの話になると、

「高級ケーブルに意味はあるのか」

という議論になりがちです。

音質だけに焦点を当てれば、非常に難しい問題です。

ケーブルによるキャラクターの違いは感じても、それを単純に

「高いケーブルほど良い音」

とは言えません。

実際、私はこれまでFender、Mogami、Canare、Monsterなどを比較してきましたが、それぞれに音のキャラクターがあり、価格の高低だけで優劣を決められるものではないと感じています。

ところが今回、別の側面が見えてきました。

それが、

ノイズ耐性です。

Studio PRO 2000へ交換しただけで、これまで気になっていたブーンというノイズが大幅に減少しました。

少なくとも今回の環境と機材の組み合わせでは、

「ケーブルなんてどれでも同じ」

とは言えない結果になりました。

ただし、ここで注意したいことがあります。

これは、

「高級ケーブルを使えばすべて解決する」

という話ではありません。

レコーディングでは、まず環境ノイズへの対策が重要

特にスタジオレコーディングでは、ケーブル以前に環境そのものを整えることが重要です。

LED照明、ACアダプター、PC、ディスプレイ、USB機器、電源タップ、トランス、インバーター機器など、現代の部屋には電磁ノイズを発生させる可能性のあるものが大量に存在します。

録音時には、

不要な機器の電源を切る。

場合によってはコンセントから抜く。

ギターを持つ向きや立ち位置を変える。

ノイズ源から距離を取る。

こうした基本的な環境対策をすることで、そもそものノイズ量を下げることができます。

環境側を整えてしまえば、ケーブルも

ノイズ耐性だけで選ぶ必要がなくなります。

音色、取り回し、柔らかさ、耐久性など、自分の目的に合わせて自由に選べるようになります。

これはレコーディングにおいて非常に重要なことです。

生活空間では、ノイズに強いケーブルが心強い

一方、日常生活の中で気軽にギターを楽しむ場合は事情が変わります。

PCも動いている。

照明も使っている。

Wi-Fiルーターもある。

スマートフォンの充電器もつながっている。

エアコンや家電も動いている。

そのたびに、

「ギターを弾くから全部の電源を落とそう」

というのは現実的ではありません。

そこで今回のStudio PRO 2000のように、

環境ノイズに対して強いケーブル

が非常に心強い存在になります。

つまり高性能なケーブルの価値は、

「必ず音を良くすること」

だけではありません。

むしろ、

条件の良くない環境でも安定して使えること

に価値が現れる場合があります。

プロ用機材の価値は「安定して結果を出せること」にもある

これはケーブルだけの話ではないように思います。

プロ向けの機材というと、

「音が圧倒的に良い」

というイメージを持ちやすいですが、それだけではありません。

場所が変わっても、

周辺機器が変わっても、

多少環境条件が悪くても、

安定して一定の結果を出しやすい。

そうした信頼性もまた、プロ用機材の価値の一つです。

今回Studio PRO 2000で感じたのも、この部分でした。

新品ギターの故障を疑ったところから始まった

今回、最初に考えていたのはケーブルの記事ではありませんでした。

購入したばかりのCabronitaからノイズが聞こえて、

「もしかすると何か問題があるのではないか」

と思ったことが始まりです。

そこから、

ピックアップポジションを変え、

アンプを変え、

別の楽器と比較し、

ギターの向きを変え、

最後にケーブルを交換しました。

一つずつ条件を変えていった結果、

ギター単体の問題ではなく、

楽器、ケーブル、そして環境の組み合わせによってノイズの出方が大きく変わる

ことが見えてきました。

しかも実際の演奏中は、弦や金属部分に触れているため、このノイズはほとんど問題になりません。

そう考えると、今回のCabronitaについてはかなり安心できました。

ケーブルは「音質」だけで語れない

今回の経験から、一番強く感じたのはここです。

ケーブルを語るとき、

「音が変わるのか」

「高級ケーブルに意味があるのか」

という話に集中しがちです。

しかし実際のレコーディングや演奏では、

ノイズへの強さ

という、もっと現実的な性能もあります。

高級ケーブルが常に必要だとは思いません。

環境ノイズをしっかり管理できるスタジオであれば、さまざまなケーブルから音色や取り回しを基準に自由に選べばいい。

逆に生活空間のように環境を完全には制御できない場所では、ノイズに強いケーブルが大きな意味を持つことがあります。

今回の検証で見えてきたのは、

良い録音環境を作ることと、適切なケーブルを選ぶことは対立する話ではない

ということでした。

環境を整える。

その上で、必要に応じてケーブルの性能を使う。

結局は、

「どちらが正しいか」ではなく、「何のために使うのか」

なのだと思います。

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