『僕らの王国』MV公開――特別じゃない、だから愛しい

  • 2026年10月23日
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「僕らの王国」のMusic Videoを公開しました。

この曲についてはリリース時にも制作ノートを書いています。

そこでは歌詞の意味やアレンジ、使用した楽器などについて詳しく触れましたので、今回は少し違う角度から、この曲をどのように映像にしたのかについて書いてみたいと思います。

今回、MVを作るうえで最後まで中心にあった言葉があります。

特別じゃない
だから愛しい

サムネイルにも使ったこの言葉が、完成した映像を一番よく表しているように思います。

「王国」を描かないMV

「僕らの王国」というタイトルだけを見ると、城や王冠、幻想的な世界を想像するかもしれません。

しかし、この曲で歌っている「王国」は、どこか遠くにある特別な場所ではありません。

カーテンを開ける。

コーヒーを飲む。

洗い物をする。

植物に水をやる。

食事の準備をする。

誰かと暮らしていれば、毎日のように繰り返される何でもない光景です。

今回のMVでは、むしろそうした何でもない日常そのものを「僕らの王国」として描くことにしました。

顔を描かず、「手」と「物」で感情を見せる

もう一つ決めていたのが、人物の表情をできるだけ使わないことでした。

人が笑えば「幸せ」。

背中を向ければ「すれ違い」。

涙を流せば「悲しい」。

映像としては非常にわかりやすいのですが、今回の曲では少し説明しすぎるように感じました。

そこで中心にしたのが「手」です。

カーテンを開ける手。

食器を渡す手。

植物に水をやる手。

そして最後に、誰かの手を握る手。

手を握るという行為はとても自然です。

キスや抱擁ほど劇的ではありません。

それでもそこには、安心、信頼、愛情、そして「そばにいる」という意思まで含まれているように思います。

反対に、人の不在を表現したい場面では、手すら描いていません。

二つのカップ。

二脚の椅子。

並んだスリッパ。

置かれた本や食器。

人を描かなくても、物の置かれ方だけで「そこに誰かがいる」「誰かがいない」という感覚は生まれます。

今回のMVでは、そうした余白を大切にしました。

モノクロの日常に色が宿る

映像には、もう一つ仕掛けがあります。

元になる絵はカラーですが、動画編集の段階でモノクロ化し、クロスフェードによって少しずつ色が現れるようにしました。

これは単なる視覚効果ではありません。

何気ない日常そのものは、いつもそこにあります。

しかし、そこにいる誰かの存在に気づいたとき、その景色が少し違って見える。

そんな感覚を、

モノクロ → カラー

という変化で表現しました。

逆に二人の距離を感じさせる場面では、色を抑える。

そして最後には再び温かな色へ戻っていきます。

水彩画から羊毛フェルトへ

制作途中では、水彩画やラフなアニメーションの絵コンテのような表現も試しました。

そこから最終的にたどり着いたのが、羊毛フェルトのような質感です。

これは結果的に、この曲と非常に相性が良かったと思っています。

フェルトで作られた人物には人の形がありますが、実在する誰かという印象は薄い。

氷山キヨテルでもEriでもなく、特定の男女でもない。

どこにでもいる「二人」のように見えます。

だからこそ、見る人自身の記憶や大切な人を重ねる余白が残りました。

また、羊毛フェルトには少し不均一な、人の手で作ったような温かさがあります。

これは、この曲の音作りとも偶然よく重なりました。

Kick以外、すべて実際に演奏した曲

「僕らの王国」は、Kick以外のパートをすべて実際に演奏しています。

クラシックギター、フレットレスギター、エレクトリックギター、フレットレスベース。

アルトリコーダー、アコーディオン。

トライアングル、シェイカー、ハンドクラップ。

シンセサイザーについてもソフトウェア音源ではなく、Teenage Engineering OP-1 Fieldを使用しています。

低音を支えているのはFender Custom Shop Jaco Pastorius Tribute Fretless Bass。

フレットレスらしい滑らかな動きで、あまり前へ出ることなく曲全体を静かに運んでいます。

この曲には、いわゆる強烈なフックや劇的な盛り上がりはありません。

ただ、自分自身の演奏スタイルはかなり詰まっています。

細かなパーカッションまで一つずつ演奏し、それぞれの音を少しずつ積み重ねていく。

その人間的な揺らぎや手触りと、今回のフェルトアートによる映像が、完成してみると不思議なくらいよく馴染みました。

氷山キヨテルとSynthV 2 PRO Eri

ボーカルは氷山キヨテル。

女性ボーカルにはSynthesizer V 2 PROのEriを使用しています。

Eriはラップ用途でも使いやすい明瞭な発音を持っていますが、その滑舌の良さが氷山キヨテルの落ち着いた歌声ともよく合いました。

今回のMVでは、この二人をそのままキャラクターとして登場させてはいません。

二つの声は存在する。

でも映像の人物は誰なのか分からない。

そのくらいの距離感が、この曲にはちょうど良かったと思っています。

探すものから、守るものへ

歌詞のサビでは、

探せ僕らの王国

から始まり、

目指せ僕らの王国

そして最後には、

守れ僕らの王国

へと変わっていきます。

リリース時の制作ノートでは、この変化についても詳しく書きました。

MVを作って改めて感じたのは、「王国」は最初から完成しているものではないということです。

誰かと過ごす日常。

少しずつ積み重なる時間。

時には離れてしまう心。

それでもまた同じ場所へ戻ること。

そうしたものによって、いつの間にか「守りたい場所」になっていく。

だから今回の映像では、最後に大きな奇跡は起こりません。

ただ、二人が手を握ります。

それだけです。

でも、この曲にはそれで十分だと思いました。

特別じゃない、だから愛しい

毎日の生活の中にあるものは、その瞬間には特別だと思わないことの方が多いでしょう。

コーヒーを飲んだこと。

一緒に食事をしたこと。

窓を開けたこと。

同じ部屋にいたこと。

そんな出来事は、記録にも残らないかもしれません。

でも後になって振り返ると、そうした何でもない時間こそが一番大切だったと気づくことがあります。

特別じゃない。
だから愛しい。

「僕らの王国」という曲と今回のMVには、そんな気持ちを込めました。

制作ノートとあわせて、Music Videoも楽しんでいただければ嬉しいです。


 『僕らの王国』Music Video

Vocal:氷山キヨテル × Eri(SynthV 2 PRO)
Music / Arrangement / Performance / Movie:m.Freaks

▶ YouTube
https://youtu.be/ti8DVYH7uHs

 楽曲制作ノート

『僕らの王国』|男女混声で描く、大人の恋と“帰る場所”としての愛
https://www.musicfreaks.jp/archives/9752

 

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付録ー調声に最適なヘッドフォン!


付録として、お気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!

今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。


僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。

その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。

ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。

♡購入までの経緯

最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。

当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするのですが、聞き疲れしないので気に入っていました。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。

気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。

Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。

♡調声に最適

結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!

丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。

同じデザインで、ST-90-05とST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。

低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。

最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。

とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!


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